第52話 遊びですよ | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第52話 遊びですよ

藤川の親は「うちの子がクラスでいじめられている」と己斐に訴えた。
藤川自身が発達障害的な部分を持ちあわせており、小学校からターゲットにされることが多かった。
親としても、こういうことは初めてでなかったし、中学校入学の段階で、己斐と面談をして状況を話していた。



藤川母が気になっていることは
『先生、うちの子が男子や女子からいじめられているのに、「あなたも強くなりなさい」ってどういうことですか!』
「というのもねえ、男子が言ってくるのは、どうでもいいことばかり。それを黙っているから、また言われるんです。言い返すだけ強くなったら言われなくなるんですよ」

母はカチンときた。
『うちの子が悪いんですか!! そうやってほっとくからいけないんじゃないですか。クラスがぐちゃぐちゃになっているって聞いてます!』
「そんなことありません。この件ではきちんと指導します。
クラスの方はいろいろある時期ですから、もう少ししたら落ち着いてきますよ」

『先生は今回の件で、うちの子は誰にやられているとか知っているんですか?』

己斐は答えに一瞬詰まったが
「ええ、だいたいわかっています。これから調査をして本格的に動きますから」
『今回こういうことがあったんで、他の親御さんにも聞いたんです。みんな心配してますよ』



藤川母の話では、特にひどく嫌がわせをしてくるのは、菊野と山本とのこと。
放課後、二人を呼び出し、己斐は話をした。
己斐が思い当たる事例を上げながら話をした。

『先生、これは遊びなんですよ。』
「あなたたちは遊びでも、本人が嫌がっているんです。だから、やってはいけません」

『それは先生の考えでしょ? 本人が俺たちにいったわけじゃないし、そもそも何で俺らの遊びにいちいち首を突っ込んでくるのか意味わからんし』
「私が本人に確認しました。だから、もうやってはいけません。いいですか?」

『そもそも、何で俺らだけなん? 他のやつもやっていることじゃん。これってまたひいき?』
『ひいきだろう』と川本が合いの手を打ち、ニヤニヤと笑った。

「他の人にも注意をします」
『じゃあ、誰に? 教えてください』

「あなたたちに教える必要ありません」
『本当は知らんのんじゃろ。で、いっつも何かやってると思って、おれらをこうやって呼び出しとんじゃろ。
差別じゃ。そうやって自分の都合で言うけえ、嫌われとるんじゃ』

「あなたたちがやっていることは、いけないので、やめなさい」

菊野、山本は反省することなく、部屋を出て行った。

次の日。
そうはいっても、菊野と山本は同じことはなしなかった。
が、別の形でやった。

藤川とは違う方を見て嫌味に笑ったり、聞こえないように陰口を言ったり。
明らかに、指導の結果がいい方向には行っていなかった。



※指導のポイント

(1)加害者の「遊び」を論破せよ

いじめをやっている生徒はすべて「遊びだった」という。
遊びだったら許されるのか? ということであるが、ここを論破しないかぎり、解決はしない。

相手が嫌な思いをしたら遊びではない、一方的にやるのは遊びではない。
しっかりとポイントを抑えて指導をしなければならない


(2)納得させなければ指導の意味はない

生徒を納得させなければ、効果もないし、恨みを買うし、逆に悪化させる結果になる。
それなりの話力、論理力が必要である。
また、ときには、強めにおどすように言うことも必要。

いかに、悪いことをしたのか、罪の意識を育てる必要がある。

次回 → 第53話 再び、母来校