第54話 校長の反応と生徒指導 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第54話 校長の反応と生徒指導

「これはいじめではない。そうだろう?」

校長の第一声だった。
1組の藤川に対する男子達の行為について言っている。

(いじめとなると、教育委員会の報告者やらで面倒だからか・・・。この人は面倒なことは何でも逃げる)
有田は内心そう思ったが口には出さなかった。
『校長先生がそうおっしゃるなら。そうなんでしょう』教頭が同調した。



どちらにせよ、問題なのは対応だ。
佐々木のクラスで起きていることも頭の痛いことだが、己斐のクラスで起きたこともまた頭が痛い。

「藤川さんから名前が上がった生徒に対しては、本人に指導して、保護者にも指導をしないといけないね。
明日とにかく本人から話を聞いてみてほしい」

*********

翌日の昼休憩、藤川を呼び出すと己斐は話を聞いた。
やはり、菊野、荒川、山本の名前は上がり、2組の生徒の名前も上がった。
他には周りで煽っている生徒もいる。
悪口を言われたり、通せんぼをされたり、笑われたりするようだ。

己斐から報告を受けた佐々木は気が滅入った。
1組の騒動に2組も首を突っ込んでいたのがわかったからだ。
1組に問題が降りかかっていたので、とても気分がよかったが、自分のクラスにもそれが及ぶとなると別だ。
しかも、保護者まで指導するとなるとは。
(やっぱり、あいつらはダメな奴らだ)

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藤川に対する「嫌がらせ」の指導は、己斐と佐々木だけでは苦戦が予想されたのもあり、有田と赤井も指導に加わった。
意外というか、神田や向井の名前は上がらなかった。
彼らはそういうものには関わらない質なのか。

2組の指導対象は甲本と清水だった。
清水とは意外である。

佐々木と有田で甲本を指導した。
甲本は事実を認め、謝罪をするといった。
その代わり、親に電話をしないで欲しいとお願いした。
校長からの話もあり、そのことについては先生たちで話をして決めると伝えた。

次に清水を呼んだ。
清水も事実を認めた。
甲本は「みんながバカにしていたから俺も一緒にやった」といったが、甲本はそうではないと言った。


「おれは1組の山本に命令されてやったんだ。あいつはいっつも、俺に何かをしてくる。最近、みんなが藤川をいじめて遊んでいて、山本が『お前、あいつにブサイク、死ねって言ってこい』と言われて、嫌だっていったら『お前も同じようにするで』って言われて、仕方なくやった」

と、これにはさすがに同情した。有田が
『山本にはいつからそういうことを言われとるんや?』と聞くと
「入学してからずっと」と言った。
『わかった。このことも含めて山本には指導をしておくから』

2組の指導はあっさりしたものだったが、新たな問題も浮上した。



一方、己斐と赤井の方は。
『何で、いちいち俺が呼び出されんといけんのんや』
『俺だけ言われるのはおかしい』
『子ども同士のことに首を突っ込むな』

と、菊野が反発した。
己斐は言うことだけ言って、菊野の指導を終わりにした。

続いて、荒川を呼んだ。
菊野も入ってきた。仲間が増えれば心強い。

『なんで、俺らだけいっつも悪者にするんや、おかしいんじゃないか!』
「でも、悪口は言ったんでしょうが」

『はあ、言ってないし』
「ブサイク、死ねって言ったでしょう? あと、ミスをすると笑ったり」

『言ってないし、どこに証拠があるんか』
「他の生徒や他の先生に聞きました。そうやっていちいち言い訳をするからいけないんでしょ!」

『何が、言い訳じゃ。言い訳なんて言ってないし、決め付けんなや!』
菊野の目が異常なほどに睨みつけてくる
「荒川君は、このことを認めるの?認めないの?」キレた菊野は無視した。

『じゃけ、なんで俺らだけなんか。納得いかんし』
「俺らだけって違うでしょうが。それに、指導されることをやっとるんよ。それを認めなさい」

『意味わからんし。小学校の時から、何かあれば俺らが悪者にしてから、おかしいんじゃい。』
「小学校と中学校は別です。何かをやれば指導されるのは当たり前です」

『はあ、わかったわかった。そうやって決め付けるわけだろ。もういいよ、そうです。悪かったです。先週に指導されてから、やってませんけど、悪かったんですね』

結局、納得させる生徒指導にはならなかった。



※指導のポイント

(1)いじめの認識で対応

いじめというのは根が深い。
何かあればいじめを疑い、徹底的に指導するくらいの安全管理が求められている。
だから、嫌がらせに関する指導は手を抜いてはいけない。


(2)指導は納得させるまで

生徒の状況もあるが、納得させないと指導の意味は無い。
何が、どういう点でいけないのかをはっきりさせよう。
何で俺だけ? と言われても、あんたと話しているから、でも答えれば問題ない。

生徒はそうやって自分に矛先が向けるのを避けているだけ。

次回 → 第55話 再度、聞き取り