第56話 適正な評価 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第56話 適正な評価

己斐は指導の顛末を藤川母に報告した
「彼らは反省し、もうやらないと約束してくれました」と言った。
それで終わるわけはないのだが・・・・。



生徒とは別に問題が起きていた。

中学校は3学期制ではなく、前期と後期の2学期制に移行している。
どういう利点がいいのかわからないが、教育委員会を始めとして、「これはいい制度だ」とか何とか言っている。

そんなことの余波を受けて、本来は前期と後期の2回成績を出すだけでいいはずだが、
土井の「それでは遅すぎる!」という発言の元、前期中間、後期中間にも成績を出す羽目になり、余計に仕事が増えた。
年間4回も成績を出すのだ。

おまけに、土井は仲の良い教育委員会の指導主事から、「神無月中の評価はちょっと甘いね」と言われ、「土井式の成績是正」に取り組んでいた。
今年は本気のようだった。


「成績の5の人数が多すぎます! 相対評価の並に人数を絞ってください!」


土井は思い込んだら最後。
そもそも、絶対評価は目標に対しての評価であり、5(5段階で一番上)が何人でようとも関係ない。
それを相対評価の人数に合わせろは暴論であり、おまけに管理職でもなく、ただの教務主任でしかない。

校長、教頭は土井の暴論に反発できなかった。

そもそも、どうでもよかった。

自分たちは成績をつけないし、うるさい土井をいちいち相手にもしたくなかった。
それに、土井の夫は教育委員会の要職を担っていた。
以前、土井にとって気に入らないことがあり、それを夫にちくり、教育委員会から問い合わせが入ったこともある。



何人かがやり玉に上がり、その一人が己斐だった。
国語の成績で66人中、5を10人つけていた
「先生、10人は多すぎます。他の教科を見てください。適正な評価に変えてください」
『でもね、テストの出来はみんなよかったんですよ。5が出ても仕方ないと思いませんか』

「それはテストが適正でなかったからです。他の部分で適正に評価してください」
『そんなこと去年は言ってなかったでしょう?』

「去年は去年。今年は研修会もきちんとしましたよ!」
と研修会の資料を広げる
「ここを見てください。こんな評価はありえないんです。適正な評価に直してください!」

こんな調子である。
とはいえ、ノートやワークの評価はすでにしてしまっており、無理である。

『先生ね、もう評価のほとんどの生徒に返してしまっていて、変えれる箇所はありませんよ。なんで人数にこだわらないといけないんですか』
「適正に評価をしたら、5はほとんど出ません! 評価できるものがなければ、また集めてください。それで、適正な評価をつけてください。ノートの評価もAばかりではおかしいでしょう? Bが半分以上つくくらいじゃないと適正ではありません」

『Bを半分つける前提がおかしいんじゃないですか?』
「おかしくありません! そういう考えだから5がたくさん出るんですよ! 適正な評価をしてください」

とにかく適正な評価と連呼する。



指導のポイント

(1)こだわりの強い人は嫌われる

それがいいかどうかは、おいておいて、土井のようなタイプは要注意。
いいこだわりかどうか、である。
こういうタイプは、周囲に犠牲を求める。

それが当然と考えるからだ。
職場にいれば嫌な奴と思われ、嫌われる
そうはならないようにしたい


(2)絶対評価に人数制限はおかしい

絶対評価に人数制限はない、これは教育委員会も認めていることであり、人数制限のために評価を変えるのもおかしい。
相対評価の人数を出すこと自体、絶対評価の趣旨とも違う。
絶対評価で必要なことは、どのような観点で評価を行ったかということ。

次回 → 第57話 再提出、不服