第62話 向井たちによる勝手な曲決め | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第62話 向井たちによる勝手な曲決め

授業中のエスケープについては、河野や教頭が対応してくれようだ。
こうした突発自体は日常茶飯時になっていたし、佐々木や己斐に改善を求めても「馬の耳に念仏」状態であった。

以前の会議で「校長と教頭が2組に巡回に入る」と決めてあったのもあり、佐々木たちは「校長が指導に来ていないのが原因だ」と主張した。


誰かがリーダーシップを取って生徒指導を徹底する場面であったが、誰もそんな熱意はもっておらず、なるがままで、場当たり的な対応であった。
最初の頃と比べ、佐々木はこの状態に慣れてしまい、生徒たちにやいや言われながら何かをするよりも、放置してなるようにする方が楽であると気づいた。
もともと、向上心などない。家でごろごろできればそれでいいのである。

みんなが誰かのせいにして仕事をしていた。



翌日の帰りのSHR。
向井たちは、CDを作って持参していた。
その熱心さに驚いたが、中身は予想したとおり、邦楽POPであった。

向井達が勝手に曲をかけながら

「やっぱこれだろう」と、何やらバラード曲がえらく気に入ったようだ。
『おおーそうしようぜ』と数名の生徒が同意した。

向井がクラスに向かって、「この曲でいい人は手を挙げて!」と言ったが、仲の良い男子が手をあげただけで、ほかはあげなかった。
過半数に届いていなかった。
「じゃあ、反対の人は手を挙げて!」といったが、誰も手を挙げない。



「おい、お前らどっちなんじゃ!! どっちにも手を挙げんてどうなっとんじゃ! 頭がおかしいだろうが!!」
キレた。
生徒からしたら、問題児たちを構いたくないし、その曲自体がいいとは思っていないのもある。

女子の渡辺が発言した。
「反対もないなら、それでいいんじゃない?」

渡辺は小学校から男子、女子問わず人望があった。
2組の女子のリーダーとして小学校の先生が期待している生徒でもあった。
(ふたを開ければ、結局、向井や神田たちと好き勝手なことやっとんだよな)佐々木はため息漏らす。

「じゃあ、決定ね。反対の人は手を挙げて。今ならまだ間に合うよ」と向井が言ったが誰も反応しない。
仲の良い男子たちが「いいじゃん、いいじゃん、そうしようや」と言い、拍手した。
向井はうれしそうだった。

合唱曲という縛りがあったが、佐々木はどうでもいいや、とさじを投げていた。
2組はしらけている。一言で言えばそういう状況。

1組、2組ともに保護者からのクレームの電話が毎日かかってくる状況になっていた。

次回 → 第63話 迎合