第70話 vs 1組 その3 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第70話 vs 1組 その3

シーンと静まり返っていた。
空気が重い。
菊野一派と思われる男子の半数以上が不機嫌そうな顔で見ている。



「話の続きに戻ろうか。大事なことだから、面白くないけど最後まで聞いて欲しい」
今度は誰も何も言わなかった。
菊野を黙らせたのが大きい。

「昨日、学年会で2組も含めて、7月までの学級の状況は聞いたよ。
今の状況ってさ、多くの人が自分のやりたいように好き勝手なことをしようとしているんよね。

これって楽しいのか?
7月までの学校生活は楽しかった??」
うなづく生徒は一人もいなかった。かすかに首を横に振る生徒が数名。

「例えば、サッカーをしている時に、これはおれのボールだといって、ボールを持ってさ、ゴールまで走って行って、ボールをゴールに投げたら、どう思う?」
相変わらずの沈黙。



「ありえないよな? ルール違反だし、そんな奴がいたら面白く無い。審判は何やっているんだって、思うよね。
サッカーって、ゴールキーパー以外手が使えない。ルールがある。
それは制約があるけど、それがあるから面白いんだよね。

この学級はね、手を使ってサッカーをやっている人が大勢いるんだよ。
一部は楽しいかもしれないけど、面白くないと思っている人はたくさんいる。

さっき自由、というのを誰かがいったけど、自由には責任があるんだよ。
自由だから何をやってもいいわけじゃない。
他人の権利を守らなければ自由なんて認められない。

聞く限り、自由を主張して他人の権利を脅かして、他人を傷つけて生活しているようにしか思えなかった。
初対面の君たちに言うのは、決めつけているようで本当に申し訳ない。

でもね、楽しいクラスというのは、一部だけじゃなくて、全員が楽しくないといけないんだよ
まずは、ここをわかって欲しい」

『そんな言っても、おれはもう楽しくないんだけど、どうしてくれるん?』
荒川が言った。一方的に言われている分、言い返してやろうとしていた。

「そりゃ、仕方ないよ。ルールを守るのは我慢もいるから。」
『そうやって、押し付けてくるんだろう? どうせ。言うことを聞かないと、一気にまくしたてて、追い出すんだろう? 義務教育なのによ』

「そもそも、君はなんで学校に来ているんだい?
そうやって、教師に反発して好きに文句をいうためかい?

ぼくは教師として、君たちにものを教えるために来ている。
学校って、そうやって学ぶための場所だよ。
そのために、君たちも、ぼくたちもいる。

それは譲れない。
そこだけは勘違いしてはいけない。

学校は集団生活。
みんなが嫌な思いをしないために、最低限のルールが決められている。
守るのは当然。

守らないで好き勝手言うのはただのわがままであり、学校で流行ってはいけないことだ。
質問があればいつでも答えるよ。


あと、言っておく。
君たちにとっては、初日からぼくは偉そうな教師かもしれないけれど、年上の人に対しての言葉遣いは気をつけなさい。
ぼくは君たちの遊び仲間でも何でもない。乱暴な言い方をされたら傷つくんだよ」


クラスは静かで異様な雰囲気のままだった。

その後、島田の話を続き、夏休みの宿題を集めて、1時間目の学活は終わった。
休憩時間に、菊野たち数名が教室を出る島田に聞こえるように

「あーあ、初日からくそ面白くないわ。覚えておけよ」


※ 指導のポイント

(1)言うべきことを徹底して言う

とにかく生徒に言い負けない。
必要なことは徹底して言う。

これができないと生徒になめられ、指導に支障が出てくる。
こうした譲れない、こだわりが必要である。

次回 → 第71話 帰りのSHR