第87話 いじめの指導 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第87話 いじめの指導

島田は気になっていることがあった。
それは藤川に対するいじめである。

最初の学年会でこういうことがあると聞いて驚いた。
学校として何も動いていないも同然で、「いじめ」という認識すらなかった。

島田は怒りを覚えた。
(こいつら、本当にあてにならないし、怒りはないのか。)


生徒がいじめられることは起きる。
だけど、指導をいい加減にして完全に火消しをしないので悪化することも多い。
そもそも、生徒がいじめられていても、教師自身が怒りを持てないのが解決しない原因だと思っている。

(この連中は典型的にだめだ。力もない。)
島田は怒った。

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なんとかして、指導のチャンスを見つるために、島田は注意を払っていて、2組で授業後の休憩時間に訪れた。
職員室に帰る際に、そっと1組を覗いたのだ。

菊野、山本、神辺の3名が藤川の席を取り囲んでいた。
『何、これださっ! 何でこんなんもってとんや』と男子が藤川の筆箱の中身を勝手に出しながら、騒ぎ立てる
「うるさいなー」と藤川が言うが、やめる気配はない。

『うわっ、汚っ』と言って、菊野が筆箱の中身を床に落とす。
このやりとりを見届けてから島田は教室に入っていった。

「おい、お前ら3人は何やっとんや」と声をかける。
教室にいた生徒がさっと島田の方、むく。

『何もやってねーよ。いちいち、声かけんなや』
「いや、やっとるだろう? それがいじめなんじゃないの?」
わざといじめと使った。
教室が一瞬静かになる。



いじめはニュースで散々話題になっているが、生徒は自分たちは関係ないと思って生きている。
いじめている生徒はにしたら、遊びだという認識しかないし、自分たちは正しいことをしていると自己弁護する

『どこがじゃ。ただ、単に持ち物を見せてもらっているだけだろうが』
「嫌がっているのに? 人のものを勝手にいじって悪口言って、物を落とすのが? おかしいよなあ」

『そうやっていちいち口出すなや。生徒のことに』
「口を出したくないが、口を出されるようなことをやっとんじゃ。ちょっと来い。」

3人を人目の付かないろう下の端の階段の踊り場に呼んで
「君たちのやっていることはだめな行為なんよ。話は放課後聞くから、それまで絶対に藤川にちょっかいかけるなよ。いいね?」

*******

昼休憩、藤川に話を聞いた。
1日目に直接話を聞いていたとおり、嫌がらせだった。

そして、放課後。
菊野、山本、神辺の3名のふれあい教室へ呼んだ。
本来3名同時に話しをするのは気が進まなかったが、こうするほうがいいだろうと判断した。

3名は「ただ声をかけていた」と主張した。

「ただ声をかけるだけ、というのが、これがださいとか悪口をいうことなの? これはれっきとした嫌がらせだよ」
『そんなん俺たちは、悪口言ったつもりがないし、あいつが勝手にそう言っているだけじゃん』

「なあ、例えばさ、ぼくが君たちを思いっきり殴ってさ、ちょっと触れただけって言ったらどう思う? それで納得できるかい? 大事なのはさ、された方の気持ちんなんだよ。藤川が嫌って言っていたら、だめなんだよ」
『そんなん知るわけないし』

「嫌だと言っていたのに?」
『それが本当に嫌だ思えんかっただけ。冗談かと思った』
さすがにカチンとくる。

「おい、冗談ですまされんだろうが!! お前らがこうやってやってきとることも知っとんで! こうやっての、世間のいじめ問題は起こっとるんで。加害者は遊びのつもり。全部、そういうだろうが。これがいじめなんじゃ。」
『じゃけ、知らんし。いじめって勝手に決めんなや』
しゃべるのも主に菊野だ。

「お前らさ、藤川に嫌なことをしていて、どうして謝罪の言葉も出んのんや。何も感じないのか? どれだけ辛かったと思うんや」
『そんなん知らんし。そもそも、なんで俺たちだけ言われんといけんのんや。ほかにもやっとるだろうが』

「だからさ、今回の件でいじめとったのは君たち3人だけだろう? ほかは関係ないだろう?」
『そうやって、おれたちだけ差別するんだろうが! じゃけ、教師は嫌なんじゃ!』

「いやいや、そうじゃない。君たちが休憩時間にしたことの話をしているだけ。不正なことは全て、指導する。あるんだったら言えや。言わないほうがおかしいじゃないか。言いもしないのに、ほかにもとか、みんなとか、せこいよ」

3人はぐうの音も出なかった。
誰が、というよりも、その行為自体に焦点を当てると言い逃れはできないのだ。


※ 指導のポイント

(1)遊びではすまさない

いじめは「遊び」から始まるが、これは悪意のある嫌がらせのことだ。
この初期段階で芽を摘めなければ悪化する。
だからこそ、初期段階からいじめという認識を持ち、加害者にもいじめであると認識させることが必要。

恐れていてはいけない。
被害者に辛い思いをさせ、我慢させる日々を送らせてはいけない。

次回 → 第88話 保護者への電話