第88話 保護者への電話 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第88話 保護者への電話

菊野、山本、神辺の3名は、それ以上、反抗できなかった。
自分たちが悪いことをしている、という事実はくつがえらないからだ。
何かを言われれば、理路整然と言い返され、その論理を突破することはできなかった。

3人は悪かったと認め、藤川に謝罪すると約束した。


島田はきゃしゃな体格であり、迫力もないが、この言い負かされないことが自分の長所であると確信していた。
生徒指導はやはり口で勝負。
生徒に言い負けるようでは、落とすこともできない。

その言い負ける典型が、佐々木であり、赤井である。
だから有効な生徒指導はできない。

「このことについても、保護者に連絡を入れる。君たちがいじめをしているってね」
『なんで、こんなことでいちいち電話されんといけんのんじゃ!』

「そうやって軽く見ている段階でもうおかしいんよ。いじめって認識がない証拠だよ。
そんなことを言うようでは反省したとは思えない。いじめというのは、こうして起こっていくんだよ。
いじめは絶対に起きてはいけないし、今後も続いてはいけない。
だから、保護者の方にも知ってもらう必要がある。」

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18時過ぎ、そろそろ家に電話を入れていこうかと思っていたら、山本の親が来た。
「うちの子に聞きましたけど、いじめをしてはいないのに、いじめって決めつけるみたいですね」
第一声から敵対ムードだ。
山本が家で、盛大に不満を言ったようだ。


有田と二人で校長室で対応した。
島田が指導の流れを説明した。

山本母は、自分の息子に非があるのはわかったようだが
『こんなことでいちいちいじめってされていたら、たまりません。子供の遊びのレベルです』
携帯の一件では反省もなく、ガラス代も弁償していない。

保護者がこのように高飛車に出てくるのであれば、こちらとしてしっかりと言い返さないといけない、と判断した。
保護者に言いたいこと言うのは気が引ける。
関係が悪くなるからだ。



「お母さん。じゃあ、自分の息子さんが、同じようにしてずっと嫌がらせをされていたも平気ですか? 藤川さんへの嫌がらせは、ずっと続いているんですよ。ただの遊びと捉えているから、いじめは起こるんですよ

ニュースで報道されている悲惨ないじめも、最初はこんなところからスタートしています。
悪化しないってどうしてわかりますか?
人に嫌がらせをして、それを正当化はできませんよ。」

『そうやって子どものことをいちいち騒ぎ立てるのがおかしいんですよ。なぜ、そうやって介入しないといけないんですか?』
(めちゃくちゃな人だな・・・・)
「嫌がらせをすること自体問題です。それを子どもたちで解決できていません。学級の状態をご存知ですか? それこそ、自分たちで解決できない証拠ですよ」

『学級のことは知っています。己斐先生が、ちゃんと指導しないからです。それを生徒のせいにすること自体おかしい』
「お母さんのご意見はわかりました。ただ、生徒がいけないことをしたら指導するのがぼくらの仕事です。嫌がらせはあってもいいんですか? 職場でもありますか? それで許せますか?」
川本母は沈黙した。

(だめだ、この親は。かかずりあっても意味がない)
「今回の件について、学校ではいじめと判断しています。大事なことは、今回で終わりにすることじゃないでしょうか。子どもなんですから、いろんなことを起こしますよね。だからこそ、その度ごとに学んで、成長していくんですよね。
こんな言い方してしまいましたが、いけいないことはいけないと教えていきましょう。

お母さんのことを責めたいわけじゃないんですよ。川本君を成長を応援していきたいんです。
ですから、これからも協力をお願いします」

*******

『島田先生、すごいねえ。あそこまでぼくは言えんよ』と川本母が帰ったあとに言った
「だって、あの人、おかしいですもん。はっきり言っとかないと。しかし、もう親がだめですね。あの親に育てられたら、子どももあありますよ」
『全くその通り、自分の子どもでさえ、面倒が見れんのじゃけね。今日のも、子どもが家で暴れたかなんかじゃろ。だから、親が、ああやって来るんよ。子ども言われるから。お前が悪いってなんて言えんのかね。教師には言えても』

「それに、ぼくは期限が決まってますからねえ。思い切って出来ますよ」
『3か月の予定って聞いているけど、年度末まで帰ってはこんじゃろうけどなあ』
「3月まででもちょっとですよ」

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後の2人の家への電話はどうだったかというと。

神辺母は、異論なく「申し訳ありませんでした」と謝罪をした。
家では暴れていて、手が付けられないのだという。
島田は、「学校で指導をしたら、家で指導はしなくていいですから。報告だけです」と言った。

菊野母は平謝りだった。
家庭事情が複雑で、母自身、子どもに手がかけられていないとのことだった。


モンスターは山本のところだけであった。



※ 指導のポイント

(1)保護者を責めても意味がない

モンスターな親はたくさんいる。
でも、それを責めても仕方がないのである。
問題なのは、子どもが成長していくことであり、保護者と協力していくのが必要条件。

だから、こちらのスタンスを保護者に理解してもらい、「指導は学校でしますから、家ではしなくてけっこうです」というスタンスが必要。
保護者の心理的負担を下げないといけない。
こうして、連絡取れあえる状況を構築していく。

保護者も自分が攻撃されていないとわかると楽である。
教師は理解者になろう

次回 → 第89話 感謝