第90話 謝罪。そして・・・再び。 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第90話 謝罪。そして・・・再び。

翌日の朝読書中、加害者の菊野、神辺、山本、被害者の藤川を呼び、謝りの会をもった。
「もう今後、嫌がらせなどで傷つけることをしないと約束できるか」と聞くと、『はい』と約束した。


それで終わればいいが、そんなことはない。
帰りのSHR。
明日の時間割伝達で、教科係からの連絡が入るのだが、藤川の声が小さかったのだ。(というよりも、いつも小さくて聞こえづらい)

『全然、聞こえませんーー!!』
『もう1回言ってください!!』

菊野、山本が大きな声で怒鳴る。
男子が多くがニヤニヤと笑っている。

島田は静観している。
藤川がもう1回、教科の連絡を入れる

『はあ、何言っとるんか、はっきり発音せいや!!』と菊野が吠える。
男子から「ほうじゃい」と賛同の声が続々と上がる。


「ちょっと待て! 言いすぎだろうが」島田が動いた。
指導のタイミングを待っていた。



『先生、声が小さいのがいけないんです。聞こえないんですから』と菊野が島田を睨みながら言う。
違う形で藤川に対して嫌がらせをしたいようだ。

「あのな。聞こえないにしてもな、言い方もあるだろう?」
『こんな言い方しかできません!』

「だったらな、君は勉強しないといけないな。君の言い方は人を不愉快にさせ、傷つける言い方だ。
あとね、さっきから見ていたら、菊野くんや山本くんが発言したことに対して、男子の多くがニヤニヤと笑いを浮かべている。
これってさ、みんなで嫌がらせをしているようにしか見えないよ。

やっていることもさ、人の揚げ足を取ることだろう。
伝達内容は黒板にもかかれてあるし、教科係の人が仕事をしようとしてくれているのはわかるだろう。
たしかに声が小さかったかもしれないけど、こういうやり方は卑怯だな。

優しさが一切ないよ。
このクラスの担任になって一番感じるところ。


もう4ヶ月は同じクラスで生活しているわけで、どの人がどんな個性か性格かはわかっているだろう。
それを認めないで、一方的に攻撃するなんて、優しくないどころか、いじめをみんなでやっているものだよ。


でな、よく覚えておけ。


大きな声で発言しなくてもちゃかした者、ニヤニヤ笑いした者もいじめの仲間だ。
本格的に指導するときは、全員にする。お前らがやっていることはいじめだってね。
こんなことをいつまで続ける気か!?

はっきり言っておくが、絶対に最後の最後まで指導するからな。その覚悟でやれよ」

静まり返っていた。
それは島田の強い口調もあったかもしれない。

半数の男子は、安易な気持ちで菊野たちに同調しており、それをいじめと決められ、少なからずショックを受けた。
自分たちは加害者ではないし、指導されるなんてもってのほかだ。
安全圏から、菊野たちが無茶苦茶にするのを楽しみたいだけだから。


『そうやって、なんでもいじめ、いじめって言うのがおかしいんじゃないか』菊野が食って掛かった。

怯む島田ではないのだが。


※ 指導のポイント

(1)嫌だと思ったらNG、そしてすぐストップ

教師が嫌だと感じればそれはNGサインである。
それ以上、進めてはいけないのでストップをかけよう。

狡猾な生徒もいて、黒じゃなくて、灰色の部分を狙って嫌がらせをすることがある。
その判定が微妙でどうしようかなと思って指導をしないと、生徒は調子に乗る。

明確な指導ができなくても、「ぼくは今のは聞いていて嫌だった」と感想を述べることもできる。
理由なんて後付でもいい。とにかく止めること


(2)優しさに訴える

嫌がらせを罰する、という形で指導するのは常套手段であるが、情に訴えるのも効果がある。
中でも、「優しさがないな」というと意外に効くもの。
優しさは一つのステータスなのか、生徒にとってわかりやすいものなのか、わからないけど。

ぐっと響くのである

次回 → 第91話 いじめの学級への指導