第91話 いじめの学級への指導 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第91話 いじめの学級への指導

島田としては、待っていた機会がやってきた。
クラス全員にいじめとは何かを、理解させる場を持ちたいと思っていたからだ。


「君たちはさ、いじめって何か知っているか? 菊野くんは、ぼくがいじめ、いじめってうるさいって言うけど、いじめってなんなの?」
『はあ、そりゃ、大人数で、暴力を加えたり、ゆすったりすることだろうが。おれらのは、ただの注意だろうが』

こうやって真面目に答えるところは可愛らしい。
憎たらしく睨みつけているけど。


「いじめってのはね、相手が苦痛を感じたらそれはいじめなんだよ。国がそうやって決めている」
ざわめきが起こった。
『じゃあ、何かされておれが嫌だったら、いじめになるんか? おれは藤川から、あっちへいけって言われて嫌だった。おれもいじめられているわ』と山本が言った。

菊野・荒川と山本の違いは知性・学力だ。
山本は感情のまま、思いつくがままに発言しているが、菊野や荒川は揚げ足をとる狡猾さや相手を苦しめようとする残忍さを持ち合わせている。

「そう言ってたら、なんでもかんでもいじめになってしまうよな。こういうとイメージしやすいと思う。
一方的にやる、関係になったらいじめだ。

例えば、友達同士であったら、ちょっかいかけたら、ちょっかいをかけ返すだろう。これは対等な関係だ。だから、ぼくはそれを見てもいじめとは言わない。
それがさ、ちょっかいをかけて、相手がやり返せないことがあるだろう。
力の差がある場合とか。これって、対等でないから、いじめになりうると思う。


違う言い方をすると、相手と一緒に遊びに行くかどうか。
一緒に遊びもしない人に対して、ちょっかいや悪口を言えば、相手にとっては嫌がらせにしかならないだろう?」

誰も何も言えなくなっていた。



「そもそも、仲が良くもない相手に、何かをするってさ、遊びでも何でもないんだよ。
嫌がらせをして、馬鹿にして、自分の優越感を満たしているだけ。
そういう人間に限って、これは遊びですからというけど。
された人間には遊びには思えない。

こうやって、いじめる側は言い訳を作って、いじめをするんだよ。
全国のニュースでもそうだろう?
みんな口をそろえて遊びっていう。

ニュースで聞くひどいことをしているだろう?
でも、最初から最後まで遊びであって、ちょっとやり過ぎた程度なんだよ。

君らも同じだろう?
遊びですって、来て1週間だけどさ、何回も聞いたよ。
そうやって、何人の生徒が嫌がわせをして、何人の生徒が嫌な思いをしたんかね?」


島田はチョークで黒板に書き始めた。

「いじめの構図を書くとさ。
直接の加害者と被害者がいる。
その周りに煽る奴がいる。これがニヤニヤしている多くの男子たち。

そして、それを見ている傍観者がいる。
この大きな集団がいじめの構図だ。
加害者だけじゃない、周りに一緒にいる生徒もいじめているんだ。

いじめを放置している人にも問題があると思う。
といっても、止めるのは難しい。
だからなんらかの形で、先生たちに伝えて欲しい。


でな、覚えて欲しいんだが、ぼくはいじめは絶対に許さない。
なくすためには徹底的に指導する。
犯罪だ。保護者にも指導をする。あなたのお子さんはいじめをしていますってね。

今日のことに関しては、こうやって話をしたから、個別には指導をしない。
ただ、次からは話が別。
みんなが共通認識を持てた。次やれば、意図的にやっていると判断する。

人を馬鹿にして楽しむような、悪趣味なことはやめなさい
それに一緒になってニヤニヤ笑うやつも同じ。」

菊野も黙った。



※ 指導のポイント

(1)学級へのいじめ指導のパターンを持つ

いじめの学級への全体指導は、なんらかの場面で絶対にやってくる。
むしろ、やっておかないと、いざというときにみんなの認識が持てなくて、指導が難しくなる。

担任になったら、機会を見つけて、早々にやっておこう。
そして、その時のための自分なりの指導内容を作っておこう

次回 → 第92話 給食の指導