第195話 酒井のケース | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第195話 酒井のケース

島田は続いて、酒井を呼んだ。
赤井からは『指導は先生がメインでやってください。私は記録したり、気になるところは口を挟んだりしますから』と言われていた。
赤井自身、神田や酒井とあまりうまくいっていない。

これはこれでうまい役割分担であるので、反対する理由はない



島田は同じように中村の話をした。
酒井はしばらく考えこんでから、話し始めた。

『まあ、、、やったっていっちゃあ、やったよ。あいつと同じ班で、あいつが何もやろうとせんから。
給食当番もおっそいし、昼休憩は校内で鬼ごっこしていて邪魔だし。』
「それで、殴ったことがある?」

『うーん、、、あるね。あいつにムカッとしたから。でもさ、ちゃんと手加減してるし、あいつが悪いし。
もうさ、あいつおったら最悪だから。
英語のペアワークとかでもあいつ何も言わんし、腹立つでしょ?』
「なるほどなあ。班の活動やペア活動で動いてくれんかったら困るもんな」

『でしょ?』
「だから殴ってもいい?」

『まあ、それはいけんかったと思うよ』
「そうだね。でも、酒井の気持ちはよくわかるよ。困るよな。
そのことは中村にきちんと伝えて、改善してもらうようにするから。」



指導において、加害者が一方的に全部悪いということはあまりない。
被害者にも、なんらかの原因がある。
今回の件では、中村の班での非強力な行動が原因としてありそうだ。

陥りやすいのは、暴力を振るったから全面的に悪いとしてしまう部分だ。
酒井は酒井なりの事情があったと理解し共感してあげなければ納得はしないし、中村自身も被害者であるが直さないといけない部分があり、それは教員が責任をもって伝えて、指導しなければいけない。
こうした指導をするかしないかで、加害者であっても、本人や親の不満は明らかに差ができる。


「あとは、デブとか言ったの?」

『面と向かって言ってないけど、確かにデブとか言ったよ。
腹がたった時に。
でも、デブって直接言うのは、一緒にいつもいる甲本とかよ。おれなんてほとんど言ってない方に入るよ』
「そうか。デブって言われて中村は喜んでた?」

『いや、喜ばんでしょ。でも、あいつ何も反応せんから、つい言ってしまうんよ』
「その、つい、で傷つく人もいる。それは理解してしよう。
それにデブってな、社会人になっても使うことないよ。だから、今のうちに使うのはやめんさい。」

『わかりました。やめます』
「約束だね。でさ、酒井の言い分もわかるけど、殴ったりした分はいけんと思うよ。その件は謝罪できるか?」

『うん、できる。』
「朝読書の時間に場を設けるから、暴力を振るったり、暴言を吐いたことはそこで謝りんさい。」

『はい。ちなみに、佐々木はくるん?』
「佐々木先生、でしょ。なんで?」

『佐々木先生がくると、いちいち面倒になるんよね。話が通じないし』
「そういう風に捉えすぎるのも考えもんで。
担任だから、成り行きを知る必要もあるし。ぼくも同席するから」

佐々木の嫌われようは表向きに出てこなくても、生徒の心にはしっかりと刻まれている。
生徒の言い分が正しい場合には、フォローしきれないところもある。

次回 → 第196話 デブ対策は?