第198話 愛 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第198話 愛

『なんで、あんなにしつこく言ったんですか?』
佐々木は学校から出て駐車場に向かおうとする島田を捕まえて言った。

自分はクラスと向きあおうとしているし、中村の問題も解決しようとしている。
現に、保護者の電話をしたり、甲本に生徒指導したりしたのだ。



島田が振り返って、ちょっと躊躇した。佐々木は続けた。
『有田先生もしつこかったですよね。あんなにしつこいのは久々に見たような。そんなにぼくって信用がないですか?』

「信用がないというか、、、生徒に愛がないよね」
(・・・愛がないと!?)
『はあ~? 何言ってるんですか、こうやって生徒のためにがんばってるじゃないですか。それを愛がないってどういうことですか?』
佐々木は教員としての自分を全否定された気になり、腹が立った。

『じゃあ、先生は愛があるんですか??』
「ぼくはありますよ。有田先生もある。だから、給食に上がってくれるんですよ。先生には生徒への愛がありますか?」

『あるに決まってるじゃないですか。勝手に決めつけないでくださいよ! 学級がうまくいかなければ愛がないと決めつけていいんですか!?』
「じゃあ、その愛は具体的な行動として、どんな時に現れたんですか?」

『今回の生徒指導したじゃないですか。保護者対応だって。』
「愛があってもなくても、それは仕事だからやらないといけないわけで。学級に対してはどんな愛を示したんですか?」
佐々木は言葉に詰まった。



『そうやってすぐに出るわけじゃないでしょ』
「そうですかね? 合唱コンのときには何かありましたか?」

合唱コンクールを思い出すと散々だった思い出しかない。そこに愛を探せと言われても・・・でも、自分からふっかけておいて、何も答えられないのもまずい。
『楽譜の印刷をしたり、歌の指導をしたりしましたよ』
「本気で言っているんです?」

ギクッとした。勢いで反論したものの、佐々木は島田に頭が上がらない。
島田の知性に、頭の良さには勝てる気がしないのだ。
島田の言い分が常に正しいのは、島田がいろんな物事を、いろんな視点から考えられるからだ。


「いいにくいですけど。先生が生徒を見る時って、いっつも目が笑ってないですよ。ひどい時には嫌いな相手を見る目つきですよ。
今回の生徒指導も、先生の表情からは『面倒くさい』って読めましたよ。」


図星だった。


「有田先生が上がってくれているのは、先生のフォローのためと思っているかもしれませんけど、半分以上は生徒のためですよ。
生徒の立場になって考えてほしいんですけど、担任の先生が自分たちのことを嫌っていると感じたら毎日嫌じゃないですか?
有田先生は陰ながら、そうした生徒たちのフォローをしたりしてくれているんですよ」

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