第202話 生徒への関心 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第202話 生徒への関心

『で、先生、クラブの方の話を教えて下さいよ。やりがいとか』
佐々木が話を戻す。
「でも、どうせまたペラペラ言うんでしょ?」と島田が答える。

『いや、言いませんよ。誓っていいません。ぼくもこの前のことで反省したんですから』
「ぼくはけっこう気にするタイプで、もし、次言ったらもう何も教えませんからね」
『大丈夫です。』



島田は納得したのか、話し始めた。

「そもそも、うちの学校は生徒に関心がないんですよ。
だから、クラブで朝練はできないし、クラブ指導は誰もせずにぐちゃぐちゃだし、クラブも当然弱い。
生徒指導も適当にしかしないから、ゆるゆるで。

執行部だって本当に適当で、全然、成長してないし。
生徒に手が入ってないんですよ。
どこに手が入っているかというと、土井先生が、『成績は適切につけないといけない!』とか『授業記録簿をちゃんと毎日書きなさい』とか、完璧を求めて、他人に強要するからいけないんですよね」

『ああ、、、それよくわかりますよ。本当にあれはうざいですよね。他の学校ではそんなことないのに、うちだけですよ。
誰も土井先生に頭が上がらないし、そのおかげで、めちゃくちゃ時間がかかりますよね。
あと、ムカつくのは、土井先生に腹が立っている教員は多いのに、いざとなれば土井先生に助けを求めたり、ご機嫌をとったり、意味不明ですよ』


「それが人間関係ってやつですよ。仮に嫌いでも、職場だからうまくやらないといけないから、ご機嫌も取るわけですよ。表面上でもきちんとやるのが大人です」
『でも、ですよ。土井先生本人はどうなんですか? 嫌っている人に対して明らかに嫌な態度や、嫌味ばっかり言っているじゃないですか!』

「クレーマーと同じで、言いたい人の勝ちなんですよ。学級でもそうだし、迷惑をかける人は、それを迷惑かけていると思ってないんですから。」
『もう、あの年だし、一生あのままなんでしょうね・・・』

「というか、あのスタイルで今までずっとやってきているんですよ」
土井自身の噂も聞いていた。行く学校、行く学校で煙たがられていた。
完璧主義者の本人が、周囲にも、学校のシステムにも完璧を求めるあまりに、同僚は辟易しているのだ。

しかしながら、彼女の言葉は正論であるため、却下できない事情もある。夫が教育委員会に入ってからはそれがひどくなったとも聞く。
学校現場で正論がすべて正しいとは限らないのだ。
『土井先生がどっかにいけばいいのにな』



「学校のシステムの”適切な”運用ばかりに目が行っているから、仕事が苦痛になるし、教員間がギクシャクするし、生徒への手がかけられなくなり、生徒指導などでも連帯感を持って動けなくなっているんですよ。」
『ほんまにそうですよね。言われた見たらそのとおりですよ!』

「学校でおとなしい生徒は家で暴れるっていうじゃないですか?
なんかあれと同じようなもので、学校でのやりがいがないから、授業とか学級とかでそれが噴出しているんじゃないですかね。
先生のところの向井が、陸上部でビシバシと鍛えられたとしたらどうなってると思います?」

佐々木は想像してみた。
『・・・少なくとも、今より礼儀正しくなるでしょうし。キレて出て行ったのを、顧問が知ったらただじゃおきませんよね。そうしたら、学級でも大人しくなるかもしれませんね』

「でしょ。顧問って特別なんですよ。クラブ活動って生徒が選んで入るわけで、義務じゃないんですよ。
やりたいことをやりにいくわけですよ。
だからこそ、顧問が大事になるんですよ。

学級とは違って、自分の意見や考えが浸透させやすいし、生徒はクラブ活動がしたいからこそ、顧問の言うことは聞くし、期待に応えようともします。
うちの学校でそうやって、顧問と生徒との信頼関係ができたら、一気に変わりますよ。
少なくとも、うちのバスケ部の子らは、失礼なことしないでしょ?」

『なるほど。そうですよね。バスケ部って本当にいい子たちばかりですよね。先生が指導しているからですか』
「でも、これが普通なんですよ。うちの学校が異常なんですよ。クラブ指導を熱心にやったら、それが見えてきますし、生徒に愛を持つこと何なのか、経験的にわかりますよ。
やってみます?」

次回 → 第203話 答えは