第208話 空回り | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第208話 空回り

放課後、数名の生徒が脱走したが、向井を始め多くの生徒は残っていた。
昨日、不平不満を漏らした真面目な生徒たちは今日は残していない。

佐々木は掃除を命じた。
生徒たちはクラブに行きたいのか、さっさと掃除にとりかかり、早々に掃除を終えた。



教室の掃除を点検した。
『机ふきしてないでしょ?』
「いや、した」生徒が答える。

『いや、してないって。だって、濡れてないじゃん』
「掃除時間中に担当のやつがやったんだって」

『何言っとん? やり直しじゃけ、全部やらんといけんじゃろうが!』佐々木は呆れながら言う。
「やってあるのに、なんでまたやらせられるん? 意味分からんし。掃除のチェック項目に合格すればいいって言ったのは、お前じゃん!」生徒はムキになって言い返す。

『お前らがさぼったんじゃけ、一からやるのが当たり前だ』
「はあ、知るか。きれいになっとんじゃけいいだろうが。お前の目は節穴か」

そもそも掃除が早く終わったのは、真面目生徒たちが掃除時間にがんばったからだ。
今日も居残りだったら嫌だと、学習したのだ。

「先生、木工室終わったよ。はよ、点検してや」
『ちょっと待っとけよ。ここが終わっていない』

佐々木は教室の生徒達に一からやり直すように言ったが、生徒たちは頑として受け入れなかった。
教室がきれいになったからいいじゃないかと言った。



「もうクラブ行くわ」と教室のメンバーたちが出ていこうとする。
佐々木は慌てて、制服の後襟をつかむ。
「おい、つかむなや! 体罰で」と生徒に言われ、とっさに手を離す。

教室からは誰もいなくなった。
技術棟に行ってみると誰もいなかった。
掃除されたらしい形跡は残っていた。


佐々木はグラウンドに行き、技術棟の掃除生徒をつかまえた。
『チェック受けてないだろうが』
「先生がこんのがいけんのんじゃん。掃除はちゃんとやったし、それでいいだろうが」

たしかに、きれいになっていたような気がしたが、それはそもそも掃除時間にきれいになったものだ。
詳細に掃除場所の状態をチェックしていなかったので、それ以上、言い返すことができなかった。


(くそっ!)

昨日の掃除と今日の掃除をサボったので2回やり直しがある。
それを1回やったとしても、もう1回残る計算になる。
もっと言えば、掃除時間にきれいにしてあったので、居残り掃除はそれほど労力がなかったはずだ。

こうやってズルした者が得をする、でいいのか?
おまけに、生徒には散々ないわれようであるし。
腹を立てながら佐々木は職員室に帰った。

次回 → 第209話 動く? 動かない?