第214話 崩壊 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第214話 崩壊

自分で自分の首を絞めるというのはこういうことを言うのだろう。
佐々木が島田に当たり散らした一件で、佐々木は職場で浮いてしまった。
思い起こせば、その前の有田の助言にも逆らってしまったし、温和な有田からも見捨てられた気がした。

会話は事務連絡ばかりだった。
誰も何かを話しかけようとしない。
だけども、島田、有田、赤井は楽しそうに話している。



冷静になって考えてみれば、この人達はいつも自分を温かく迎えてくれていた。
のに、自分の機嫌が悪いというだけで、棘のある態度を平気でとっていた。
見限られても仕方ないわな。

佐々木はそうやって分析した。
心の溝はそう簡単に埋められないだろうとも。


昨日の教頭と校長の呼び出しでは、具体的にどうやって指導するのか考えて今日は教えろと宿題が出ていたが、島田たちブレーンがいなければ、具体的なアイデアも何も出なかった。
困りに困っていた。

・・・もしかして、俺は見限られたのか。もうあと2か月、何をしてもだめだから。新年度になってからどうにかすればと。
荻原が学級に対して考えるのと同じで。



ここからの1週間は佐々木にとっては忘れられない1週間となる。


朝読書中の小さな私語を「あれはいっか」と放置するだけで、一気にクラス中にひそひそ私語の嵐になり、うるさい朝読書の時間になった。
「うるさい!」と叫べば、少しの間静かになるだけで、効果は何もなかった。


給食のおかわりは、誰かが混乱に乗じて、勝手におかずをつぎ始め、流れに任せると一気におかわりの取り合いになった。
「おい、ちょっと待て!」と口で言うだけでは何も変わらなかった。
あわせて、教室はストローが散乱し、給食当番はエプロンを着用しなくなり、合格・不合格関係なしに、次の給食当番に移行した。


掃除は、各掃除場所での反省会に全員が集まらなくても済ませてしまうことで、どんどん崩れていき、ごみがたまるようになった。
真面目な生徒たちも、掃除をしなくなった。なんとなくほうきを持って、なんとなく掃除をやっているふりをしている
掃除時間は遊び時間に変わった。


抑えこまれようとしていた力から反発するように、生徒たちは以前よりも暴れた。
毎日、教室に上がると黒板は汚く、教卓には足跡がつき、倒れていた。
誰も彼もが佐々木に対し「うざい」と顔をしかめた。


少しだけ立ち直りが見えたクラスが一気に崩壊する様を、そのきっかけを佐々木を見たのだった。
前期に学級崩壊した時には見えなかった、その引き金が今回は見えた。
学級をおいておくと、成長したといえる。

ダムが決壊する瞬間に何が起きたのか、それを意識し、間近で見られることはそうないだろう。
佐々木には忘れることのできない1週間となった。

次回 → 第215話 行き着くところに行けば・・・