第215話 行き着くところに行けば・・・ | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第215話 行き着くところに行けば・・・

佐々木は、もう何もやる気にならなかった。
連日、教頭から説教され、報告しろと催促された。
保護者からはクレームの電話、PTAの会合がある度に佐々木と荻原のクラスの話題があげられた。

この頃では、「来年は荻原の担任は絶対嫌」「佐々木の担任は絶対嫌」という電話が本人たちに知らないところで散々かかってくるようになり、教育委員会にも電話が入っている様子だった。
荻原も、佐々木も校長から「教師に向いていない。若いから自分を生かせる仕事もあるだろう」とやんわりと転職を勧められもした。



それでも職にしがみついた。
教師しかないからだ。
教師を志した段階で、他の仕事にはほとんどつけない。専門性も会社では役に立たない。
教員はクビにはならない。これは強みだと佐々木は感じていた。


教育委員会の人間が授業を数回見に来た。その度に、小さな研修会が開かれ、改善するように言われ、レポートも出すように命じられた。
意欲もないのに、嫌なことばかりやらされる感じがした。
もしかしたら、こうやって辞めるように追い込んでいるのかもしれない。

窓際族というやつか・・・。
そう思えば思うほどに、思い当たることがある気がする。





苦痛の日々になんとかしがみついた。ぼろぼろだった。
しまいには、PTA主導のもと、保護者たちが荻原と佐々木のクラスの授業に張り付くようになった。

小学校でも盛大に学級崩壊していて、常に保護者がいるような状況であるという。
中学校でも同じ措置が取られたわけだ。

ただ、対応が違うのは、平川、土井、島田など授業がうまく回っているときには保護者は来なかった。
この保護者の動きがあると校長も「授業空きの先生は、授業に入ってください」と言わざるを得ず、大きな反感を買った。

平川は「担任は学級のことなどで忙しいんです」と反論したこともあり、主に副担任が行くようにとなった。
負担が増えることで、授業に入らないといけない教員に対する反感が増えて、職場の雰囲気はますます悪くなった。
土井などは「こんなに忙しいのに」と露骨に文句を言っている。

当然、教頭、校長も職員室にいる時間は少なくなり、仕事が増えたようだった。これには他の教員が喜んだ。



こうして学校に保護者が出入りするような状況は、どんどん不健全にしていった。
学校が信用されていない、教師が信用されていない、監視されている証だった。

保護者が廊下でひそひそ話をしているのも聞こえる。
佐々木は、自分のことか、荻原のことのどちらかじゃないかと思えて仕方なかった。


当然ながら、保護者たちから、どんどん要望が校長などに寄せられて、校長の対応をせざるを得なかった。


さて、肝心の効果はちゃんとあった。
思春期ともなれば、人の目が気になる。無邪気な小学校時代とは違う。
そういう生徒たちは私語して暴れる代わりに、伏せて寝た。

モチベーションが上がるわけもなく、授業中の雰囲気は最悪だった。
さらに拍車をかけるように、隣が平川や島田などの授業で盛り上がったりすると、より一層暗くなるのだった。

次回 → 第216話 来年のための準備