第220話 生徒指導に重点を置く1年 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第220話 生徒指導に重点を置く1年

新年度は、学級がちゃんと成立する、授業がちゃんと成立する、これが必達の条件だった。
このため、生徒指導主任の有田は何度も会議を開き、教育委員会の生徒指導主事とも連絡を蜜にしてきた。
生徒指導のために指導員の配置も決まっている。

去年の二の舞いにならないためにも、保護者の巡回という不名誉な負担をなくすためにも、
「今年は学級や授業で守るべきルールを、全学級で統一して実施していきます。実施できない場合は即、生徒指導していき、早期発見、即生徒指導、という体制でやります」
有田は宣言した。



新年度2日目。生徒指導部主催の研修会。
この日のために有田は様々な資料の準備をしてきた。
何度も何度も土井からツッコミを入れられ、その度に行数と制約が増えていった。

朝読書1つとっても、ただ静かに読ませるでは済まされない。

・本を忘れた生徒は学級文庫を読ませ、その日に家庭連絡を入れる
・授業で使う教科書は読ませてはいけない
・机の上は本だけとしてその他のものは一切出さない。出しているものは、没収する
・副担が週1回点検を行い、不合格である場合は、1週間巡回を行う
・私語はさせてはいけない。私語した分は帰りのSHRでその時間だけ読書をする


といった形で、やることばかりが増えた。

「あれだけ学級崩壊したのだから」と土井は繰り返し主張し、明文化させたのだった。




「マジでこれってやらないといけのん? 必要ないんじゃない?」
転勤してきた秦は、昨年度の状況を全く知らない。発言もうなづける。

「昨年度は本当に大変でした。保護者が毎日巡回に来ていたんですよ。だからこそ、今年はそうなってはいけないので、適正に運営するために決めた指針です。」と土井が言った。
でないと、土井を始め、他の教員が割りを食って仕方がないからだ。
今年の始めから大変だった。というか、昨年度はずっとであるが。

佐々木、荻原が学級をめちゃくちゃにして、問題ばかりを発生させて、自分で解決できないから周囲へ丸投げをしたのだ。
授業に関しても同じで、半数の教科が授業崩壊を起こしており、空き時間のある教員は上に上がらざるを得なかった。
そんな中で、平川と島田のクラスには応援が必要なかったので、それがとてもありがたかった。

3年生は問題山積であったが、「進路」という強烈な脅しがあったので、そこまで表面化することなく、なあなあの内に流し、無視してきた。
保護者からの批判は相当数あった。


今年はそんなことにはなりたくなかった。
だからこそ、やるべきことでがんじがらめにして、チェックできる体制を整えたのだ。
指導員をつけてもらい、生徒指導主事が毎月のようにやってくるし、その度に報告会、研修会を行うのだ。

生徒指導に本気に取り組む1年にするのだ。


こうした方針に対して、佐々木は肩身の狭い思いをするのだが、反論できるものはなかったし、もうすでに気分は暗かった。
「全部を指導できるだろうか・・・」不安ばかりが頭をもたげていた。
ただ、こうして、やるべきことが書いてあるのは、楽であった。マニュアルのようなものだ。これさえやればいいわけである。

次回 → 第221話 島田の思い