第221話 島田の思い | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第221話 島田の思い

(今年1年は順調に学べる年になりそうだ)と島田は感じていた。
ベテランで学級経営が上手い平川と同じ学年になったからだ。

去年はなぜか赴任早々、学年主任になり、佐々木の面倒や後始末をする結果になった。
なんといっても、今年は初任者研修もそこそこに”充実”しそうだからだ。



そのまま持ち上がりで2年生かと思っていたが、校長に呼ばれた日のことを思い出す。
『来年度は2年生が希望かね?』
「どこでもいいです。お任せします」
島田は新規採用が神無月中と決まった時から、2年生を持ち、相棒は佐々木だろうなと思っていた。

『わかった。ちょっと考えないといけないこともあるから、なんともいえないけど』
と校長が言葉を濁した時から、もしかしたら、という思いもあった。

去年のことを思い出すと、正直なところ、面倒なことばかりだった。
学級は仕方ないし、不満もないし、毎日楽しく過ごしたのでいい。

しかしながら、一緒に働く教員は最悪だった。
そもそも、職員間の仲が悪く、職員室はいつも異様な雰囲気で満たされている。
息苦しい。居心地が悪い。



一緒に働いた佐々木も、職員室で面と向かって暴言を吐かれた時に、完全に見限ってしまった。
あの瞬間に「ああ、この人はもう無理だな」と悟った。

佐々木のやることなすこと、そもそも根本的に考え方から間違っていることばかりだけど、若いうちこそ、今のこの段階だからこそ、成長していけると思っていた。
学級はうまくいっていなかったけど、立て直すチャンスは何度も訪れていた。
年明けの最初こそが一番のチャンスだったが、佐々木がフイにした。


とはいえ、佐々木には生徒からの当たり強さが耐えられなかったし、それはそれで仕方がないと思った。
教師自身が心身ともに健全ではないと、学級を変えることはできない。
あの段階ではもう無理だった。

そう判断し、粛々と佐々木の後始末に回った。
今年度はスタートからと思っていたが、相棒が平川に変わったのだから、ホッとした。
新採として、まず自分がきちんとしなければいけないのだから。


職員室の雰囲気では、佐々木も荻原も問題を増やすだけで邪魔なので、早く病休に入ってもらいたいと思っているようだった。
ひどい話ではあるが。
この2人のおかげで、空き時間も拘束されて、2月、3月は鬼のような忙しさだったのだ。

の割に、2人から感謝されることもないし、努力をすることも見られない。
他の教員が割りを食わされて、本人はスルーという状況だった。
今年はそれを防ぐためにも、項目を付けて徹底的にさせる方針になったのも致し方がない。

だめなら病休にでも入れと、追いやっていくのだろう。
教師である前に、人間として立派であってほしい。



学力が低く勉強についていけない生徒を落ちこぼれと言うことがある。
佐々木と荻原はまさしく、教員の落ちこぼれだ。ピラミッドの下位に属する教員だ。

彼らは学力が低い生徒に対し「勉強しろ!」「宿題をちゃんとしろ!」「授業をきちんと聞け!」というだろう。
しかしながら、『じゃあ、自分たちはどう?』と聞き返すと、返す言葉がないのが現実だろう。
教師として言動不一致はいけない。ただの無責任の口だけ教師になってしまう。


島田が思うに、「それぞれの個性を活かせ・伸ばせ」と思う。
すごい教員がいれば真似したくなるけど、その真似はうまくいかないことが多い。
自分の体質や個性、能力にあってないからだ。

佐々木は佐々木らしさ、荻原は荻原らしさを発揮できれば、本人も生徒も楽しく、楽になるのになと心底思う。
そうした境地にたどり着かなければ、気苦労ややるせなさはずっと続く。


今年はどうなるか・・・指導力がないといっても、生徒も同僚たちも容赦してくれない。
うまくいかなければ病休に追い込まれるのがおちか。
本人たちが伸びようと思わないかぎり、現状は何も変わらないだろう。

遠巻きに見学だろうな。まずは自分の仕事、学年のこと。それだけを考えてやる1年にしようか。
次回 → 第222話 荻原の思い