第222話 荻原の思い | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第222話 荻原の思い

「ああ・・・また始まった・・・。生徒が来れば地獄の日々が始まる」
荻原は独り言をつぶやく。

午後6時。校門の外でたばこをふかしていた。
一度やめたはずのたばこも、仕事のストレスもあり、また吸い始めていた。



荻原は昨年の途中からずっと体調を崩していた。
学級がうまくいかなかったのは、最初からであり、それが周囲に知られ締め付けが強くなった当たりからだった。
誰にも何も知られなければ、ここまで体調悪化はしてなかっただろうと思う。

体重は100キロをとうとう突破し、頭の髪の毛は薄くなり、鳥の巣のようだった。
ストレスのせいで、家に帰っても、寝ていても学校のことが頭から離れないこともあり、飲酒の量が増えていった。
そのためか、睡眠の質が落ち、身体の疲れも抜けにくくなった。

体重増による負担は腰に来ていた。人知れず、コルセットをはめて働くようにもなっている。
やることなすことがうまくいかず、仕事も残業が多くなり、家と職場を行き来するような生活だ。

唯一救いなのが、給料が人並みにあることだった。
タバコをいくら吸っても、酒をいくら飲んでも、いくら食べようが、お金に困ることがないのはありがたいことだった。
いいことはそれくらいだ。


学校に行けば生徒に馬鹿にされ、授業ではうまくいかず後始末やバレないように工作する日々、同僚からは辛辣な言葉を吐きかけられる。
地獄だ。

その地獄も新年度になれば、と思っていたが、現実は違った。



年度末に校長には何度も何度も「3年生の副担任にして欲しい」とお願いに行った。
理由は単純で、担任をする力がなく、3年生が受験の脅しがあり一番落ち着くからだった。

蓋を開けてみれば、2年生の担任であった。
その後、「赤井先生と担任に変えてもらいたい」と校長に懇願したが、当然ながら却下された。
『生徒指導部から方針も出るし、周りの援助をもらいながら1つずつ積み重ねていったらいいよ。去年経験した2年生だから、今年はもっとうまくいくよ』と言われたのだ。


完全に地獄に突き落とされた気分だった。
2年生とは、去年から授業がうまくいっていなかった。
当然、担任として現れれば、容赦なく攻撃されると予想される。

いいことがないわけでもなかった。秦が転勤してきたことだった。
同年代で、若い女性がいるのはうれしい。
また、秦は明るい性格で、荻原に気さくに話しかけてきて談笑もした。


荻原にしてみると、この1年、どのように延命するかが大事だった。
自分のプライドからすれば病休にはいるのはありえない選択肢であり、教員を続ける必要があるのだ。
心身ともに疲弊している彼に、向上心というものはなかった。

ノルマこなしたら周りがなんとかしてくれるだろうと考えていた。
次回 → 第223話 学年会の様子