第225話 入学式の流れを説明する | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第225話 入学式の流れを説明する

1学年の教員が1年生の教室の階に上がると、ろうかでかなりの数の1年生がうろうろしていた。
互いの教室を見たり、出て入ったり、友達としゃべったりとかなり活気づいている。
そもそも、自分の席について待つようにと指示が出ているのにも関わらず。

その光景を見て、佐々木はまた嫌な気分になった。
教員たちの様子を見ると少しずつ生徒が教室へ入っていく。



ろう下に残ったのは、石神、黒井、近場、村上と6名の生徒たち。
(この子たちが、小学校時代に学級崩壊されたメンバーか。なんにしても、毎年多いよな・・・。小学校はどうしてこんなに崩壊させるんかのう)
有田はそう思わずにはいられなかった。
『おーい、教室に入ろう。今から入学式の流れを説明するから』と声をかける。

しかし、10人は動かなかった。無視しているようだ。
無視といえば、秦もそんな生徒の様子はおかまいなしに2組の教室に入った。
(え、、、普通声かけるじゃろ)と有田が思うのは無理ない。佐々木も固まっている。

「君たち、さっさと教室に入りなさい」と赤井が声をかける。
赤井は学年主任になってから、意識が変わったようだ。
今までは生徒指導をしようとする意識はなかったが、自分から声をかけるようになった。

「おれらはここでいいや。」と石神。
『あったかくて気持ちいいし」と近場が答える。
そして、他の生徒がバカにしたように笑う。小学校でも同じように過ごしたのだろう。


『とにかく、入りなさい』
有田が近寄っていき、生徒を押していく。赤井も続く。
佐々木はついていくだけだが、なんと声をかけていいのかわからなかった。




生徒たちはしぶしぶながらも教室に入った。
佐々木は、重い足取りで1組の教室に入り、生徒たちを見回した。
石神や村上は相変わらず、ニヤニヤしている。

入学式の説明を始める。途中から飽きたのか、石神は机の上に足をのっける。
そんな様子を見ながらも佐々木は淡々と説明を続けた。
小規模校なので、入学式でも呼名がある。

その練習の時でも、石神、村上はふざけていた。
佐々木はそれでも注意をしなかった。

1年前、同じようにここで話をしたが、去年の生徒はちゃんとみんな猫をかぶっていた。
石神と村上の態度はひどく、面食らっていたのだった。


しまいには、石神は遠くの村上や沢井としゃべり始めた。
さすがに、「おい、今は説明聞いとけよ」と佐々木は注意したが、返事には驚いた。
『おまえ、いちいちうっさいで。説明長いんじゃ。勝手にやっとけや』

佐々木は固まった。パソコンがフリーズしたように数秒動けなかった。
なんと返すべきか、頭が真っ白になった。
『そりゃあ、言い過ぎじゃ。先生に対して失礼じゃ』と有田が注意した。

有田の存在に気づき、佐々木は心底、助かったと思った。
『今は静かにしておきんさい。大事な入学式なんじゃけ』
石神はそれ以上反抗せずに、しゃべらない代わりにジェスチャーで村上とやりとりをして、たまに笑っていた。

※ 指導のポイント


(1)最初が肝心

石神のようなひねくれた問題生徒にはどう対応するか。まさに教師力が問われる場面である。

他の生徒の立場からすると、ちゃんとしたいわけで、「先生に注意してもらいたい」と考えているはず。
もしも、なんらかの注意をしないのであれば、他の一般生徒に見限られてしまう恐れもある。
だからこそ、何らかの反応をすべきである。

とはいえ、最初から「うるさいんじゃ」と言えればいいが、人間関係ができていない分、デメリットが大きいように思う。
もしも、自分のキャラが「うるさいんじゃ」と言える強面であれば問題ない。
この場合、そもそも、生徒はそんな態度はとらないでしょう。


もしも、柔和で物腰が柔らかいのであれば、「どうした?」と声をかけるところから始めるといい。
「うっさいんじゃい」と言われれば、そのまま、まともに相手するのは考えもの。
『ああ、いいね、その声の大きさ。呼名のときにはそのくらい出してね』などと、ずらした返答を自分ならする。

というのも、相手と同じ土俵で「黙れ」の応酬になればこちらにメリットはない。
石神は低学力であるので、機転はきかない。
ずらした答えや機知に富んだものを言えば、相手がフリーズして、こちらに主導権が来るし、石神も面白がってくれる。攻撃を仕掛けてないから。


石神がこれ以上の攻撃には出てこないだろうと思われる。
というのも、場を支配しているのは圧倒的な一般生徒たち。その生徒たちが納得、支持されるようにこちらが対応すれば、数のプレッシャーとなり、問題生徒もなりをひそめる。
何も言わない多くの生徒を暗黙の内に掌握することができれば学級経営は楽になる。



(2)机の上に足をのせる

石神が机の上に足をのせる行為は、即刻指導である。
人間関係ができている・できていないの問題ではなく、それはマナーであり、礼儀であるから。
遠慮する場面ではない。

この意識を持たないかぎり、生徒はメリハリを持って行動はしてくれない。
次回 → 第226話 その他の学級の様子
指導ケース → 225話の指導ケース~初対面で挑発された時の指導