第229話 秦の暴走 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第229話 秦の暴走

「マジむかつくんですけど」と秦が昼食時間に、しきりに話しているのは保護者の事だった。
「ああやって、こちらに、あれしろ、こうしろ、大丈夫ですか?、みたいなことをよくもまあ、偉そうにいたもんよ」
学級開きのあとの保護者が詰めかけてきたことを言っているのだった。

「ほんまにここの保護者は常識がないわ」秦がぶつくさぶつくさ、佐々木に言っており、佐々木はうんうんと熱心に話を聞いている。
赤井と有田は(自分のことじゃないか)と思いつつその話を聞いている



入学式の日は午後に授業はないので生徒は部活動の生徒だけである。
職員会と生徒指導の研修会が予定されていた。

職員会では土井から入学式での指導についてだめだしがなされ、不安なスタートを予感させた。
生徒指導研修会では、明日からの体制について再度確認がなされた。

そして、学年会である。
「もう入学式の日から忙しいのは勘弁だわ」秦が文句を言う。

もちろん、話題の中心は生徒の様子である。
「あ、私んところは大丈夫。黒井ってのが落ち着かんかったけど、一喝してやったら落としなくなったし。大したやつじゃないよ。
あと、近場だるそうにしてたかなー。ほかは問題なさそう。」
と秦が報告する。続いて、佐々木が話す。

『2組はやっぱり、石神ですね。机の上に足を上げたり、落ち着きなかったり、自分の席から村上と何やらやりとりしてました。
村上もしょうもないやつで、にやにやしてますね。
いまのところ、気になったのはこの2人ですね。』



「まあ、初日じぇけ、大人しくしとったんじゃろうな。あれでも。」有田がしゃべる。
「でも、石神の態度は問題ありだね。かなり重たいよ、あの子は。」

『その机の上に上げた足は注意しましたか?』と赤井が佐々木に聞く。
『いやあ、、、まあ、、、』

『え、注意してないんですか?』
『もっとひどくなったら、しようかと思って、まだ様子見の段階ですし』

『もっとひどくなるとか、、、もうすでにひどいじゃないですか。ちゃんと注意しなきゃダメですよ。初日からナメられますよ』
この言葉に佐々木の胃は一気に重さと冷たさを増した。

「注意といえば、秦先生、気になったんだけど、学級に入る前に、ろう下に生徒がいたよね。なんで注意せんかったんかね?」
「はっ? 何で私がせにゃいけんのん? 担任は学級でしょう。だから、副担任がやればいいじゃん。どうせ暇なんだし」

『先生ね、最初から思っていたけど、友達じゃないんだから、もう少し丁寧な言葉づかいをしないとだめですよ』
赤井が秦の言葉遣いを注意した。1週間我慢して、ようやく注意となった。

「これ、私の個性なんですけど。それにみんなただの教師であり、同僚でしょ? 関係ないし。」
これにはさすがの有田も驚きを隠せない
『先生、そりゃあ、言いすぎじゃわい。年上や先輩を敬うってのは、職場では必要なもんよ。そういう言い方していたら、みんなが気持よく働けんようになるよ』

「それは先生の意見でしょ? いちいち私に言うのおかしくないですか?」
「おかしいとか、おかしくないとか、の前に礼儀でしょ」赤井が言う。

「そうやって偉そうに言うから嫌われるんじゃん。はあ、めんどくさ」
秦はそっぽを向いた。
「そういうこともおかしいでしょ!! 」

その瞬間に秦が席を立ち、「気分が悪いんで、年休で帰ります。さよなら~」と言って出て行った
有田、赤井、佐々木の3人は呆然として、秦の後ろ姿を見送った。


※ 指導のポイント


(1)丁寧な言葉づかいは基本

驚くことに、年上に対して平気でため口を聞く教師がいる。
そんな教師に限って生徒に「礼儀をきちんとしろ」なんて指導するから、さらに驚いてしまう。

たしかに、校長、教頭の管理職を除けば、全員が同僚であり、平教師である。
しかし、その中で序列もあるし、人間関係を円滑に行うためにはコミュニケーションのマナーが必要。
いい職場環境を作るにはどうしたらいいかと、心を砕くべきである

次回 → 第230話 新たな仮想敵