第230話 新たな仮想敵 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第230話 新たな仮想敵

時刻は18時前。職員室は異様な興奮に包まれていた。
秦が学年会で好き勝手な発言をし、年休をとって帰ったことが話題の中心だった。
そんな暴挙が行われれば残された人間は面白くない。

赤井が土井に話をしたところから、一気に火がつき、女性教員が全員集まった。
また、有田も秦の言動に不満を持っていることから、その場に加わっていた。
荻原はそばで展開される話を直接は加わらないが、聞き耳を立てていた。

あとの男性陣は素知らぬ顔である



「前から思っていたけど、ありえんわ。赤井先生や有田先生は悪くないし、よく言ったと思いますよ」と河野が言った。今日はなぜか言い方が丁寧である。
『あの人は自分のことが見えてないんよね。何でも自分ができると思ってるから。なのに、自分からは生徒指導しようとしないんよ』と赤井が応える。
秦が来て1週間ばかりであったが、みんなに秦への不満はかなり溜まっているようだった。

「採用1年で転勤の理由はあってましたね」と土井が言う。
そう、秦は新規採用されたものの、1年目の初任校ではうまくいかず、転勤してきたのだった。
もうめちゃくちゃな仕事っぷりで、しまいには「パワハラを受けている」と校長に訴えたようだ。


「あれがサイコパスね」

出た結論はそうだった。これからは「サイコさん」と呼ばれそうだ。
また、校長には今回のことをきちんと報告しておいた方がいいとなり、赤井と有田が報告しにいった。

「うん、そうか。。。やっぱりうまくいかんわね。
前の学校でも同じようにトラブルばっかりだったみたい。
教員同士だけではなく、保護者とも、うまくいかんかったって。

だから、サポートをしていくしかないんじゃないかね。
しばらくは様子を見てみようや」

校長自身はすぐに動く気はないようだった



共通の敵ができると仲が良くなると言われる。
職場を支配していたのは、男性を仮想敵とした女性陣の結束だった。
が、秦という新たてより実害のある敵が出来上がったことで、より女性陣の結束はかたまり、有田も組み込まれた。

土井と有田は意見の衝突ばかりであるが、この仮想敵の登場により、なぜかお互いに話をするようになる。

赤井は責任感の強いタイプで、真面目な人間。
(どうしたらいい?)と考える毎日だった。
今回は初めて学年主任を受け、秦という暴走キャラがいることで落ち込みは激しかったが、周囲の理解はありがたかった。


****************


翌日、秦は不機嫌そうな顔で出勤し、挨拶もせずに席についた。
当然ながら、誰も秦には声をかけない、本人も声をかけようとしない。
気まずい雰囲気が漂っていた。

職朝後の、各学年の簡単の打ち合わせでもだんまりを決め込み、自分の仕事を黙々とこなしていた。
その後は、担任は教室へ、副担任は下駄箱のチェックをして、各教室への巡回である
有田は特別支援学級の受け持ちの生徒とともに教室へ上がる。

先行きが不安なことばかりだった。

※ 指導のポイント


(1)噂とはついてまわる

自分がどう評価されていたかは、転勤とともについてまわる。
それが本当であれ、噂レベルであれ、周囲がそう捉えているのだから仕方がない。
また、その評価は「あっていない」と本人が感じて、本人の自意識過剰によるところが多いのも現実。

同僚だった人の評価は案外、的確なことが多い。
噂はついて回るので、割り切りは必要。また、変な噂が立たないようにしないといけない。


(2)自分の言動には責任が伴う

当然のことだけど、もしもやりたい放題やってしまえば、反撃はある。
職場は強調することが大事で、みんなで働きやすい環境を作っていくもの。
そこで、我を発揮しすぎれば、当然、その影響やしわ寄せはやってくるし、自分の責任である。

学校はあなたの正しさを主張する場ではなく、生徒のためにどう動くかを考えるところである。
この原則を踏み外して、「自分」を主張し過ぎるといけない。
これは社会人として覚えておきたいところだ。

次回 → 第231話 朝読書でいきなり