第231話 朝読書でいきなり | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第231話 朝読書でいきなり

佐々木が1学年の階に上がると、石神たちが10名ほどがろう下でたむろしていた。
あと3分でチャイムが鳴る。
他の1年生はみんな席についている。

(入学早々これでは先が思いやられる・・・)佐々木は嫌な予感がしてたまらない。
隣の秦を見ると、その気配を感じたのか。
「早く声掛けないと。男でしょ!」と言って、佐々木の肩を軽く叩いた。



女性からこういう風に頼られることの少ない佐々木は妙に嬉しくなり、(俺がやらねば!)と駆り立てられた。
秦は昨日、攻撃してこなかった佐々木のことは嫌っておらず、気に入りに入ったままのようだった。

『おーい、教室に入って座れよ。あと3分でチャイムなるぞ。チャイムなったら遅刻になるぞ』と大きな声で注意をした。
今年は遅刻をちゃんと付けることも、研修会で口酸っぱく言われていた。

「あとは任せたよ」と言って秦は教室へ入っていった。
『え!?』と驚いたが、自分しか残っていないので動かない生徒たちに声をかけていく。
『おい、さっさと動けよ。遅刻つけるで』

生徒はお互いに目配せをしてニヤニヤしながら、ゆっくりと教室に入っていった。
2日目はとりあえず、遅刻0であり、全員が来ていた。



遅刻チェックのチャイム、つまり始業開始のチャイムがなれば10分間の朝読書の時間である。
1日の入学者登校日に、朝読書の本を持って来いと言われているので、ほとんどの生徒が持ってきていた。
佐々木のクラスは、石神だけが忘れていた。村上が持ってきたのは意外だった。

『忘れたら、後ろの学級文庫を読むこと。あと学校のルールで、忘れた時には家に電話を入れることになっているから』
(言ってしまったな・・・)佐々木は後悔混じりに思う。

1年生には学校のルールを浸透させるために言わなければいけない。
言えば言うほど、自分がその指導をやらなければならなくなるのだ。
今年はそういうルールが異常に多い。

(今日は石神の家に電話をしないといけないな・・・。1回忘れくらいいいだろうに)がっかりだった。

当の石神本人は、後ろに学級文庫を取りに行くこともせず、落ち着きなさそうに周囲をキョロキョロ見ながら、貧乏ゆすりをしていた。
そのうち飽きたのか、筆箱から消しゴムを取り出し、机をこすって消しカスをつくり、周囲に投げ始めた。

『おい、石神! お前何やっとんじゃ!!』佐々木の突然の大きな声に生徒は驚き、一斉に佐々木と石神に注意を向ける。
「は? 別にー」

『消しカス投げたらだめだろうが』
「は? やってないし」としらを切る。

『学級文庫を取ってこい』
「じゃ、とってきて。」とふてぶてしく言う。

「石神くん、そういう言葉遣いはだめじゃろう。」と生徒を連れてきた有田が声をかける。
そして、後ろに本を取りに行き、石神に本を渡す。
「ふん!」と言って石神は受け取ると、机にだらっともたれかかるようにして、本を開いた。


やれやれのスタートである。
朝のSHR後に、佐々木は有田から『よく注意したね。ああいう形で、何かある度に注意するのはいいと思うよ』と言われてて嬉しかった。
この調子でやってみようと思えるのだった。
次回 → 第232話 島田と荻原の学級開き