第238話 代議員を誰にするか | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第238話 代議員を誰にするか

『はい? 私??』と驚いた表情で自分を指差しながら返事をしたのは、3年1組の女子の岡本だった。
「そう、私」と島田が返事をする。



昨日。

「平川先生、代議員なんですけど、誰がいいと思います?」と島田が話しかけた。
『ああ、そうね。ちゃんとしたのを選びたいよね。』

「このクラス分け資料を見てて思うんですけど、荻原先生が担任していた生徒の方はあまり情報がないですよね。」
『そう! もう去年はずっとだめだったからね。あれじゃあ、生徒のいいところも出てこない!』

「女子がですね、実際に見てみると、けっこういい子が多いと思うんですよ。でも、よくわからない部分もあって。岡本って子はどんな子ですか? リーダーでチェックが付いている前川って子よりいい動きをするんですよね」
『ああ、、、岡本ね。その子ね』


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『先生は私が去年どんなことしてたか知らないんですか?』岡本が不思議そうに聞く
「よく知らないけど。どんなことしてたの?」

『担任が荻原で、あいつが贔屓ばっかするから、めっちゃくちゃ文句言ってたんですよ。いっつも。おかげで、荻原からは無視されるし、どうせ、職員室でもダメ生徒って言われてる思ってたんですけど』

そう平川の昨日言っていたことだった。
荻原は簡単にいえば、ハゲでデブで優柔不断。女子からは「生理的に嫌い」と言われるタイプだ。
どういうことがきっかけでそうなったかはわからないが、岡本は荻原バッシングの女子の急先鋒だった。

言葉遣いも悪く、言いたいことを割りとスラっと言ってしまうのも原因であったが。
そんなわけで、荻原とは全く合わず、激しく反発していたのだった。
そういう自負があるので、彼女自身、教師から低く評価されていると思っているようだった。




『ま、私だったら、前川より断然、岡本がいいけどね。荻原くんはそうじゃなかったみたいよ。だから、ノーチェック、どころか悪口が書いてあるでしょ。授業でも良い発言するのよ。力はあると思うけど、1,2年ともに担任とは合わなかったみたい。陽の目の当たらなかったタイプね。
うまくいくと思うんだったら代議員をやらせてみたらいいんじゃない? 彼女にやる気はないかもしれないけど』
平川の言葉を思い出す。


「で、今年はどうする?」島田が岡本に聞く。
『へ?』

「いや、今年も担任をバッシングするのかなと思って。」
『いや、しませんよ。先生に不満とかないですから』

「だったら、いいじゃん。代議員やったら」
岡本はしばらく考えこんだ。
『ってか、私なんかがなったら、他の人達が怒りますよ。いい加減やってましたから』

「確約じゃなくて、決めるときに立候補してみたらどうかなってことなんよね。で、さ、それで代議員になったら、誰も文句ないんじゃない?」
『それって、誰も出なかっただけなんじゃないですかね』

「あのさ、代議員になったら、ちゃんとやるんでしょ? だったら、誰も文句言わないと思うけどね。それで、文句言ったらぼくが指導するよ」
『私よりいい人いっぱいいますよー』

「クラスで見てたら、岡本がすごくよかったんだよ。率先して動いているし、男子にも女子にも声をかけられるし。代議員したらいいなって。それに今まで委員会とかやってきてないでしょ? 一度はやってみたら?」
『急に言われても・・・』
「まあ、とりあえず、立候補だけしてみて。その後に考えたらいいよ。それじゃあ」と言って島田は立ち去った。

次回 → 第239話 委員決めと予想外の展開