第254話 謝りの会 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第254話 謝りの会

『先生、昨日の件で謝りの会はやるんですよね?』
翌日の朝である。秦が何も言わないので、赤井が切り出した。

「わかってますって。いちいち言われなくてもやりますよ」
『いつやる予定ですか?』赤井はしつこいかもしれないが、確認せずにはおれなかった。

「もう! いちいち!! 朝やりますよ!」秦は怒って答えた。



朝とは朝読書の時間のこと。赤井は直接指導はする気はなかったが、秦がきちんと指導するのかだけは確認がしたかった。
ので、朝の様子を観察しに来た風に、少し離れたろうかで見守ることにした。

「おい、黒井、近場、沢井。ちょっと来い!」
教室に入るなり、秦は叫んだ。こうした配慮のない呼び出しは生徒は大嫌いだ。
それでも、3人とも不機嫌そうにやってくる

「お前ら、わかっとるだろ? 昨日のことじゃ、猿田に謝れよ」と秦を気色ばんで言う。
『そんなんしらんけど』近場が挑発的に言う。

「なんじゃ!? お前らがやったんだろうが! きちんと責任とって謝れよ!」
『昨日、俺ら怒られたし、親まで呼ばれたし。もうやることやったし』

「はあ、何いっとんじゃ!ええかげんにせいよ!」
『ええかげんにするのはお前じゃ!! うちの親が、お前のこと、頭がイカれとるっていいよったし。お前の言うことなんか聞かんでもいいっていったで!』
こうやってまくし立てるのは、黒井ではなく、近場だったので驚きではあったが、当然、内容も驚きである。


その時、「おう、呼んだか!」と嬉しそうに現れたのは、1組の石神だった。
騒ぎを聞きつけて、1組の生徒が数名廊下に出てきて、他の生徒達は窓から熱心に覗いている。
佐々木の指導はうまくいってないようだった。



『ババアがうっさいんだって!』と近場が石神に言う。それを複数の生徒を聞いて笑う。
「おい、いい加減にせんと、ぶちのめすぞ!」秦が近場の胸ぐらをつかみ、凄みのある声で言う。

『はあ!? やってみいや!体罰教師。おい、やれや!』近場はひるむどころか、秦を睨み返す。
「ババア! ババア!」と石神がババアコールを始める。周囲もそれに合わせる。

『やめなさーい!!!』赤井が割って入る。有田も止めに入る。


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「どうせ、私が悪いんでしょ。もうわかってますから」と秦は逆ギレを起こしている。
なんとか騒ぎを止め、朝のSHRの時間だった。
緊急事態なので、SHRをほかの教員にお願いし、事情把握を優先していた。

『じゃあ、先生はこの後、何をしたらいいと思ってますか?』赤井もついイライラしてしまう。
「だから、指導すればいいんでしょ。あいつらが悪いんだから」

「先生ね。仮に生徒が悪くても、聞き入れる状態じゃなかったら効果はないよ」有田が言う。
「生徒が何に腹を立てているとか、どこが納得できていないとか、考えて見ないと」

「悪いのはあいつらですよ!何でそこまでしないといけんのん」
「先生は、生徒の気持ちを考えるのが、苦手なんでしょ?」

この言葉に秦は
「はあ!!! 何言っとるん!!! 意味分からんし!! わかるに決まってるし。いちいち決めつけんなや!」と怒りだした。

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「人の気持ちが理解できないんだと思うよ。だから、図星だったから、バカにされたと思って怒ったんよね。いっつも自分だもんね。主語が相手にならないんよね。教師には厳しいよ・・・」
有田がため息混じりに赤井に言った。

「どうやったらうまくいくかを考えないといけないのにね」


※ 指導のポイント


(1)呼び出しにも敬意を払う

大抵、呼び出すときには指導の必要がある時である。
そうした際には、生徒の心境としては、呼びだされたことがバレたくない。
だからこそ、こっそり呼び出すような配慮が必要である。

秦は「生徒が悪いからああやって呼びだされて当然」と考えて行っている。
自分がされたらすごく怒るであろうに。
たとえ、生徒が悪い状況でも、生徒に敬意を払うべきである。

この大事にされている感が生徒との関係を築くために必要だからである。
次回 → 第255話 にっちもさっちも