第264話 給食指導・改5 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第264話 給食指導・改5

次の給食。
荻原は4時間目のあとすぐに教室に上がった。
そして「今日は合格になるように、さっとやってしまおうぜ!」と声をかけた。



島田からは「今日が大事。軌道に乗せるためには、今日を合格にできるように指導しないと」と言われていた。
この前、問題を起こした荒川はそのこともあってか、ムスッとしていた。
が、エプロンも身につけ、やることはやっていたので、声はかけなかった。

ペナルティーの効果もあってか、配膳は時間内に余裕を持ってできた。
「みんなよくがんばったね。上手だったよ」と荻原は声をかけた。

久しぶりに気持ちよく、配膳が終わり、荻原は爽快な気持ちであった。
が、やっぱり問題は起きるもの。

給食を食べ始めて何気なく、生徒の様子を見ていると、山本がナフキンを引かずに食べているのだった。
(見るんじゃなかった)激しく後悔する。



去年までであれば、無視していた。
だから、ナフキンを持ってこない、ひかない生徒は山のようにいた。

けれど、今年はダメだ。
「小さなルール違反の見逃しが、学級崩壊の始まり」だと、島田から言われていた。

『山本、ナフキンをひいて食べよう』
勇気を出して荻原は声をかけた。

「さっきひいとったし。もう収めたから、いいっしょ」
なるほど、そう言われればそういうものだな、と去年なら言っただろう。でも、そうはいかない。

『じゃあ、出して食べよう』
「はあ~? 面倒くさいし」とそのまま食べ続ける。

荻原は席を立ち、山本の席の方へ行く
「いちいち来んなや!」と山本がいらいらした声で言う。
荻原はおかずの食器2つを取り上げ
『なら、まずは出せ!』と強い口調で言った。

「おい、返せや、デブ!」山本が怒鳴る。
生徒の間では、荻原は役立たず教員で、「デブ」「ハゲ」と言った形で呼ばれていた。

『なら、ひけ!』荻原も譲らない。
この行動には本当に勇気がいった。島田からのアドバイスがなければ、実行はできなかった。
生徒の怒りの感情をもろに受けるのだ、辛い。逃げたい。


と感じる一方で、逃げたからうまくいかなかった去年の自分の姿が浮かんでくる。
とてつもなく惨めだった。

自分は優秀であり、生徒から人気者になるし、出世もすると考えていたのとは、現実は違った。
島田に指摘されたのは、「自分の都合で判断して動いているだけですよ。結局は嫌なことはせずに、生徒から逃げているだけですよ」
まさに図星だった。

ようやく認める勇気が持てた。
そうすると、どうして現実がこうなっているのかが理解できるようになった。
生徒ではなく、自分が引き起こしたことだった。
次回 → 第265話 給食指導・改6