第266話 保健室の事情 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第266話 保健室の事情

(ああーーー、くそ! また来やがった!)
養護教諭(保健室担当)の河野は内心、毒づく。

(いつもいつも、都合が悪くなったら、保健室に来させやがって)
給食時間なのに、荻原のクラスの山本がやってきたのだった。



昨日は荒川、そして今日は山本。
(こっちだって、給食をたべてるっつの)

「あんたね、給食中は保健室が開いてないんよ。だから、教室に帰りんさい!」
『は~~気分が悪いのに!? 先生おらんでいいから、保健室開けてや』と山本は不機嫌そうに言う。

「だめだし。教室で給食を食べてからきんさい」
『給食もう食べたし。ってか、教室はあのデブがいてうざいし。マジむかつくし』

河野は生徒が教室には帰らないことを知っていたし、話を聞いて欲しいアピールをしているのもわかった。
それでも腹が立って仕方がなかった。

というのも、担任の教師たちは生徒が体調が悪いとき以外にも、生徒が面倒になったら、どんどん保健室に送り込んできて、あとは知らん顔なのだ。
山本にしても、生徒指導の結果、本人が消化不良に陥ってここに退避してきているのはわかる
昨日、今日の荻原の頑張りはなんとなく伝わってくる。

だけど。自分が言いたいことだけいって生徒を追い詰めたあとのケアに関しては何もない。
それが問題だった。




保健室であとは面倒見れってことなのか?
全く意味がわからない。
こうやって保健室に逃げ込ませるようなやり方をするから、生徒が成長できないのだ。

河野が日頃から、不機嫌な裏にはこうした事情があった。


学級崩壊しているクラスの生徒は情緒が安定しない。
だから、去年は荻原、佐々木のクラスは異常なほどに保健室を利用していた。
こんな利用率は見たことがなかった。


担任に注意をしても何の改善もなかった。そもそも保健室に来るのは、生徒の権利であり、生徒の主張だからだ。
指導上の都合が悪くなると「保健室に行くか?」と嬉しそうに声をかけているのだろう。
そのため、各2学級しかないのに、いつも保健室は賑わっていた。
次回 → 第267話 保健室の事情2