第275話 荻原の1番の問題 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第275話 荻原の1番の問題

「先生、言いにくいですけど、はっきりいいますよ。いいですか?」
『いいよ、いって。もうどうやっても、落ちようのないところまで来ているから』
と余裕を見せて答える荻原。

島田は言うべきかどうかを躊躇した。



というのも、荻原のようなプライドの高いタイプは自己評価が高すぎ、自分のことを客観的に見ることが苦手だから。
他人からの指摘には冷静に受け入れがたい要素を持っている。

「先生の指導や学級経営には、教育的な哲学はないんですよ」
『いやいや!!』と荻原が口をはさもうとするのを島田が静止して続ける。

「先生にはあったつもりでも、生徒にはそれは伝わってないんですよ。残念なことに。
で、やったつもりになってしまうわけです。たぶん自己満足ですよ。」
『やることはやったし』と荻原は頑なだ。

「でも、先生からそういうものをぼくは感じなかったですよ」
島田も繰り返す。荻原は自分の足りないものを認めさせなければ、成長しない。





「例えばサッカーをしているときに、生徒達がボールを手でつかんで運んでいるような状況です。先生は『注意したよ』と言うけれど、生徒はそのまま手でプレーしている状態です」
『それはありえんでしょ』

「そのありえない状況が横行していたんです。でも、先生は『注意した』と言って、やることはやったと言い訳をして放置していたんですよ。すべて生徒が悪いって言って」
『でも、生徒が悪いのは本当でしょ?』

「そうですけど。スポーツの世界では審判が止めないといけないし。学校ではそれを止められないのは、教師の責任ですよ。言ったか、言わないかではなくて。」
『じゃあ、全部教師の責任? それっておかしいじゃん。家庭でしつけてない親が悪いし、問題を起こした生徒が悪い。なんで俺が悪いように言われるん?』


「問題が横行しているのを言い訳して、何もしない教師も悪いでしょ。お金をもらっているプロなんですよ。言い訳がぼくらの仕事じゃないでしょ」
荻原はしばらく黙り口を開いた。

『まあ、そんなことはわかっていたけどね』
どうも、自分がいかにできていないかを認めたくはないようだ。今日は色々と問題があったし、心を素直になれないのかも知れない。
次回 → 第276話 3点セットの指導