第295話 状況 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第295話 状況

中村母の言葉には衝撃を受けた。
自分の中では、自分はダメな教員だ、力不足だというのはわかっていたつもりではあったが、こうやって保護者に、しかも保護者間で話題になるほどだと聞かされるとショックだった。
頭がクラっとして、足に力入らなかった。

その後の電話対応はよく覚えていなかった。
とにかく謝り、問題解決のために全力を尽くすと約束をした。
「体育の時間か・・・」荻原はため息をついた。



体育は川島が全学年を担当しているが、この川島が問題だった。
川島自身は常に「自分はやっている」と主張を繰り返すだけで、生徒指導は行わずに体育の授業は荒れた。
弱い生徒が攻撃された。

生徒がやらないからという理由で川島は、サッカー、バスケなどの試合を毎時間させ、カリキュラムを無視していた。
技術指導などではなく、ただ単にそうしていれば生徒は文句言わないから。
そうやって放置するので、体育の時間のあとはトラブルを生徒は抱えて教室に帰ってきた。

川島が担任する2年2組は1ヶ月も経たないうちにだめになった。
荻原の担任する2年1組も崩壊状態であり、1年生もすでに崩壊状態。
うまくいっているのは3年生の平川と島田のクラスだけ。

去年も似たような状況だった。




翌朝、早くから来ていた川島に、昨日の中村母との一件を相談した。
川島は「私はきちんとやっている。それなのに言ってくるほうがおかしいんじゃない?」とだけ。
主任としてのアドバイスはなく、途方に暮れた。

川島は結局、周囲に何かを言われたとしても、常に「やっている。生徒がおかしい」というだけで、実は何もしない。
噂では、川島は「周りが何もしようとしない」と言っているようだ。

同じ学年団の土井と河野に相談したとしても「適正に」とか「きちんと指導しないからじゃない!?」とか役に立たないことを言われるだろうと判断し、荻原をしなかった。

土井と河野からすれば、荻原も川島もうまくいっていないにも関わらず、何の報告も相談もしてこずに、自分たちを無視ししていると感じていた。
同じ学年にいるのに、勝手なことばかりやり、アドバイスをしても何も聞かずにどんどん状況を悪くしていって、結局崩壊させていると。

心も足並みもバラバラだった。

頼るべきは島田だった。