第301話 河野の協力 | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第301話 河野の協力

翌朝、荻原は覚悟を決めて学級に上がった。
相変わらずの調子の2年1組だったが、教室の後ろから入ってきた河野に驚いた。
『河野先生!なんできたん??』生徒たちが声を上げる。

「あ、いいから、いいから、前向いて」と河野。
河野が来たこともあって、生徒たちは前を向く。
教室に教師2人がいるのは、やはり生徒に与えるプレッシャーは違う。

「朝読書の前に、みんなに謝りたいことがある」荻原は口を開いた。



生徒は「?」という顔をしたがそれ以上口を挟まなかった。

「昨日から始まった給食の完食週間なんだけど、担任である自分がいい加減な対応をして本当に申し訳なかった。
このために保健委員の2人が動いてくれていたのに台無しにしてしまった。
申し訳なかった。

2年1組として、完食週間の取り組みをしっかりしたいと思う。
昨日は河野先生と話をして、どういう風に取り組んでいったらいいかを相談した。
そのことも合わせて聞いて欲しい」

冷やかす生徒はいなかった。
河野が来ていることもあったが、荻原の誠心誠意謝ろうという姿勢を見てはそう簡単に冷やかせるはずもなかった。

生徒は後になってから荻原に「河野先生はちゃんとやるかどうか監視に来たんでしょ?」と言ってきた。
真相としては、昨日、河野は親切にも取組方法を具体的にどうやったらいいか、また朝にみんなの前で謝って、取り組みをしようと呼びかけようと提案してくれて、監視ではなくて、何かあれば助け舟を出そうと思って来てくれたのだった。

河野らしくない行動にとまどいながらも、荻原の心は温かくなった。
河野からしてみれば、完食週間の責任者であり、普段から何も言うことを聞かない荻原がやる気を出してくれたのが嬉しかった。




河野が提案したことの1つは生徒たちの意識改革だった。
朝の荻原の話で、ずいぶんその準備ができたと思う。
もう1つは、3年生がやっているようにすべてのものを配りきって食缶を一度空にすることだった。

配り切る際には、男子を多めにすること、特によく食べる生徒にはご飯もおかずも多くすること。
3年生では、この食缶を蓋をしてもう二度と返させないようにしているが、さすがにそれは難しそうなので、どうしてもダメなら返してもよいとした。
ご飯は量が多いので、配りきりを諦め、他のおかずを完食することを確実にしようとなった。

この話を聞いて荻原は「たかが完食でここまで考えるとは・・・」と驚いたし、それを実行している3年の平川と島田を心底すごいと思った。





配膳時間。

河野は2年1組に上がってきて配膳を手伝ってくれた。
「先生、けっこうちゃんと給食当番が動くじゃん。すごいよ」とほめられて、荻原は嬉しさを隠せなかった。
島田からとにかく給食当番を機能するようにアドバイスを貰い努力したかいがあった。

男女でのつぎ分けることと、配るのはちょっとした手間だったがきちんと終えることができた。
その盛られた量を見て、生徒はゲッとうなった。

しばらくして、男子生徒がニヤニヤし始めた。
気づけば、荻原のご飯が山々盛りになっていたのだった。

「うわーーー、すっげーーー。めちゃくちゃやる気じゃん!!」
「えっ、そんなに食べるん?そういやあ、返しちゃいけんって先生が言ってたしな」

完全な冷やかしであり、悪ふざけだった。ご飯の盛り方は半端ない。
荻原は一瞬、怒り爆発となりそうだったが。

ぐっとこらえて、笑顔を作って、

『おーーーー言ったな~~~。今行ったやつ出てこい。お前らのやる気も認めて、ご飯を山盛りにしてやる。同じだけついでやるからな』
「は~~~」「え~~~っ!?」と声が上がったが、生徒が真剣に怒っている風でもない。

『早くでてこーーい。もってやる。おれはこのご飯食べるぞ。お前ら言うだけか?根性ないなあ』
荻原は笑顔で対応できた。
河野が朝会、配膳と手伝ってくれたのが大きかった。

誰かが協力してくれるというのはありがたいものだ。どうしてこんなに河野が協力してくれるのか不思議であったが。