第315話 授業の悩み | t-labo(中学校教師の支援サイト)

第315話 授業の悩み

着ベルの取り組みは少しずつ良い成果を上げるようになってきたが、荻原には悩みはまだまだあった。
授業のことである。

1,2年の理科の授業担であるが、まったくうまく行かなかった。
毎日、毎日、私語との戦いであり、実験はぐちゃぐちゃだった。

荻原は島田に相談した。



「単純に、生徒が授業に興味が持てないんじゃないんですか?」と島田。
『やっぱ、そこかね』と荻原は相槌を打った。

が、内心では、自分は大学では理学部で専門的に科学をやってきており分野の偏りはあるが、知識には自信があった。
実のところ、授業内容は素晴らしいとさえ考えていたし、その素晴らしさに興味が持てない、理解できない生徒に問題があると考えていた。
しかし、島田に反論しても意味がないことは学習したし、現実としてうまくいっていなくて相談しているわけで、島田に反論するのは意味がなく、話を聞くことに意味があることを理解していた。

荻原は、人から話を聞く技術がグッと上がっていた。
以前なら、反論して相手の話に勝とうとしていたのだった。


「例えば、なんで理科なんて勉強するんですか?」と島田は聞いた。
生徒はよく質問してくることだった。




『そりゃ、社会に出た時に役に立つからでしょ』と荻原。間髪入れずに答えた。
「それで生徒は納得しますか?」

『いや、納得しないけど。こういうのは納得するとかのレベルではなくて、やっておかないと行けないレベルでしょ。
いずれやっていたことの意味がわかるし、勉強ってそんなもんでしょ』
「なるほど。だったら、先生が校長から『将来のためになるから、TOEICで900点取れるように勉強しなさい』と言われたら、今日から英語の勉強をしますか?」

『するわけないじゃん。英語なんて何の役に立つ? 意味ないし』
「生徒も理科のことをそう考えているんじゃないですか?」
島田の言葉を聞いて荻原はハッとした。

「ぼくらの仕事って、自分で言った言葉が自分に帰ってくると思うんですよね。
生徒に納得なんてしなくていいって言ったって、自分がそうされたら嫌じゃないですか。
だったら、生徒が納得するにはどうしたらいいんだろうって考えないと」

『たしかに。。。。先生は、理科を勉強する意味ってどこにあると思う?』
「それは自分で考えてくださいよ。ぼくは理科じゃないですし」


「もしも、先生が理科の授業を、お前らはこれを覚えればいい、教科書の通りにやればいいって考えて授業していたら、きっと重しくない授業になっているでしょうね」
荻原は答えに詰まった。
そう考えて授業をしていたからだ。