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t-laboは”teacher laboratory” を意味し、教師を志す人を応援する活動を行っています。

t-laboの基本理念は、「誰でも教師が務まる・できる」です。
一部の天才や才能ある人だけができる職業ではなくて、すべての人、言うならば「色々な人がいるから学校でいいんじゃない?」的な発想です。
そのために身につけなければならないのが、「教科の専門知識」がいることは当然ですが、もう一つ必要になるのが「生徒指導のスキル」です。

生徒指導のスキルを身につけているのといないのでは、大きく違います。
生徒指導のスキルは、教師を支える一番の基盤であると考えています。
そのスキルがあるかないかで、教師人生は大きく変わります。

t-laboは特に、生徒指導のスキルについて「現場の生徒指導」に焦点を当てています。
そして、これから教師になろうとしている大学生の方には「大学では教えてもらえない生徒指導」という視点で実践的に取り組みをやります。



まずは、次の新任の沢井先生の話を読んでみてください。
もしかしたら、どこかでひっかかる何かがあるかもしれません。



新任教師赴任する


沢井壱郎は、大学卒業とともに、ある中学校へ新規採用教員として赴任した。
非常勤講師の経験もなく、社会人も初めてで、不安でいっぱい。
赴任先は、小規模な公立中学校。そして、1年生の担任。

「えっ、いきなり担任か・・・大丈夫かな」
沢井先生は心配だったが、4月1日から勤務が始まり、周りの先生とも打ち解け、仕事をしていくうちに
「やればできる! なんたって、大学卒でいきなり採用されたぐらいだから、俺はできるんだ!」
と確信を深めました。

あっという間に、入学式は終わり、教室での学級開き。
教室の後ろには、保護者がたくさん。
机には身の丈に合わない制服を着た生徒たち。
不安もあるのでしょうが、学校生活への期待で目がランランと光っています。

学級開きはあらかじめ用意した話をして、無事に終えることが出来ました。
100点の出来です。
しかも、生徒や保護者からは
「やった! いい先生が担任でよかった!」
「かっこいい!!」
「若い先生だから熱意があって、子どもとも親身になってやってくれるからよかった」
といった喜びの声が聞こえてきます。


次の日からオリエンテーション期間で、学校の決まりや学級の決め事などを学習していきます。
そんな中でも、生徒がいつも沢井先生の周りを取り囲んでいます。
「先生、何歳なん?」
「彼女はおるん?」
という感じで、もはや有名人といった扱いで、学級でも沢井先生が話すと生徒は盛り上がり、笑顔があふれるクラスです。
「順調!人気だし。よそのクラスはうちみたいに活気や笑いはないし。一人勝ちじゃ。よし、よそとの差をどんどん引き離すぞ!」

家庭訪問もどこでも歓迎され、4月の下旬にある野外活動も成功をおさめました。
社会人とはこんなに楽しく充実したものか。
しかも、他の先生からは、「すごいね」「よくやっているじゃん」とほめてもらい、自分の天職は教師で間違いないと確信するようになりました。
もちろん、授業の準備や校務分掌など慣れないことだらけで、夜も遅く残り、帰ってごはんを食べるとこたつでうたた寝をしてしまうような生活です。


ここから始まる・・・


ゴールデンウィークも終わった5月のある日、ささいな事件は起こります。
「給食のときに、机の上にナフキンを広げ、忘れた生徒は職員室で借りてくる」という決まりがあるのですが、田村くんが忘れてしまったのです。

配膳中に、田村くんは沢井先生のところにきてこう言います。
「昨日、用意しておいてけど、忘れたんよ。先生、これでいいじゃろ?」
と授業で使ったプリントを持っています。
沢井先生は
「えっ、それはナフキンじゃないからだめでしょ。職員室で借りてくることになっているんよ。借りておいでよ」
と。田村くんは
「先生、職員室まで行ったら時間がないし、これでいいじゃん。小学校のころ、忘れたらみんなこうしとったんよ!」

沢井先生はちらっと時計を見ましたが、配膳時間はまだ8分は残っており、借りるだけの時間は十分あります。
迷っているところに、田村くんはさらに言います。
「先生、お願い! 今日だけ! 用意はしとったんよ!」

沢井先生の心の内はこうです。
(うーん、、、どうしよう。たしかに、今日だけならいい気もするし。配膳指導もせんといけんし。小学校でもやっていたんだろうし。ここでいちいち指導していたら、面倒な教師だと言われるしなあ。念を押しておけば大丈夫じゃろ)

「よし、わかった! 絶対、今日だけで!」
と沢井先生は決断しました。それを聞いて田村くんは、
「やった! ありがとう! さすが先生! だから人気があるんよ!」

次の日の配膳時間。
なんと田村くんはまたナフキンを忘れてしまいました。今日もまた授業のプリントを持って沢井先生のところにやってきました。
「先生、持ってきたはずのナフキンがないんよ! じゃけ、これでいいじゃろ?」
昨日だけという約束だったので、沢井先生もさすがにムッとして
「昨日約束したじゃないか。昨日だけって。だったら約束を守れよ。今日は借りてこい」
と、怒りながらです。

「じゃけ、持ってきたのがないんだって。だから、ひきたくてもひけんのんよ。俺のせいじゃないじゃん」
と田村くんもムッとして言い返してきます。

沢井「ほんまに持ってきたんか?」
田村「持ってきたし!誰かがとったんじゃ」
沢井「もしかしたら、家に忘れたんじゃないんか」
田村「いや、もってきた」
と埒があかず、おまけに田村くんは興奮した口調になってきました。

沢井先生は困ってしまい、考え込みます
(もし教室でなくなったら面倒になるわ。家に忘れたんじゃないかと思うけど、騒ぎになってもなあ。今日はなくなったから仕方がないか)
沢井「よし、わかった。今日だけで。家に忘れてるかもしれんから、家でよく調べるんだぞ」
田村くんは大喜び。
結局、次の日、田村くんは無事にナフキンを持ってきました。家に忘れていたようです。トラブルでもなくて本当に良かったと沢井先生は胸をなでおろしました。


1人から増えて・・・


次の週の月曜日の放課後。沢井先生はクラスの女子生徒に話しかけられました。
「先生、けっこうな男子が給食の時にナフキンをひいてませんけど、いいんですか?」
ドキッとしました。そこまで気付かなかったし、見てもいなかったのです。
「わかった。次の日に指導するから。教えてくれてありがとう」
とだけ、言うのが精一杯でした。

火曜日の配膳時間。たしかに、5人の生徒がナフキンをひいていません。
5名の生徒は廊下にいたので、すぐに呼びました。
沢井「ナフキンひかんといけんじゃろ。だしんさい」
そうすると

生徒「ナフキンひかんでもいいんじゃろ。田村はプリントだったし」
沢井「いや、あれには事情があったから仕方ないじゃろ」
生徒「なら、うちらにも事情があるわ。だけん、ひけんわ」
沢井「そうじゃないだろ。ルールがあるんじゃけ、ひかんと」
生徒「それ差別じゃん。田村はよくて俺らはよくないわけ。最低じゃ、差別するとか」
沢井「いや、差別なんかしてないし。ルールがあるからやりゃな仕方ないじゃん」
生徒「田村はよくて、俺らはだめんじゃ。差別じゃ。だから、嫌われるんじゃ。うざっ!」

そして、他の生徒は「差別!差別!」と連呼します。
結局、5名はナフキンをひかないまま給食を食べました。


学活でも荒れる


次の日、学活のときに全体的に騒がしく落ち着かなくて、その中でも一際騒いでいる、清水くんに注意しました。そうすると、
清水「は? しゃべってないし。」
沢井「いや、しゃべっとったろうが、じゃけ、注意しとるんじゃ」
清水「あっちの方がうるさいし。なんで、俺だけ注意されんといけんのん。それって差別じゃん」

と、あたかも沢井先生が悪いようにいってきます。さすがの沢井先生もこれにはキレて
沢井「うっさいんじゃ! お前がうるさいから注意しとんじゃ。よそは関係ないじゃろうが!」
と怒鳴りました。清水くんは
清水「お前がうっさいんじゃ。しゃべってない言うとんじゃ。何決めつけとんや。そうやって差別するから、嫌われとるんじゃ」
そして、他の生徒からは「うわー差別じゃ」という声が聞こえてきます。

『嫌われとるんじゃ』という言葉は沢井先生の胸に深々と刺さりました。自分は優れた教師でみんなから人気があると思っていたのに、実は嫌われていたとは。生徒から裏切られた気持ちで大きなショックです。
「とにかく、うるさいんじゃ。騒ぐなや。授業中は黙っとけや!」
と大きな声で怒鳴りました。さすがに生徒は黙りました。


うまくいかなくなる


6月にもなると、クラスの生徒と沢井先生との関係は一気に悪化していきました。

道徳の時間に、手紙を書いていた女子がいたので、注意をして手紙を没収しようとすると
「触んなや。もう書かんからいいでしょ。あっちいって!」
と言われ、

朝読書中には、その日の宿題をしている生徒が増え、私語も増えてきました。
宿題をしている生徒に注意をしても
「あと少しだから待って」と言われそのまま放置という状態です。

給食中のナフキンは引いている生徒が10人もいない状態。
あとは引いておらず、みかんが出ればみかんを投げて食べたり、牛乳のストローはその場で投げ捨てるような状況が続きました。

沢井先生は注意はするものの、
「なにひいきしとんじゃ」
「差別するとかないし」
「うざい」
「何偉そうにしとるん?」
と生徒に言われ、押し切られる始末。
沢井先生が大声をあげると一時的に静かになるものの、そういう時に生徒は無視を決め込んだり、切れてものに当たる生徒が出たり。



四面楚歌というのはこのことか


沢井先生は学級がうまくいかず、毎日の授業準備や校務分掌の仕事等でへとへと。
おまけに土曜日には部活動があり、朝は部活、午後は仕事。
心休まる日がありません。

そんな日々の中、周りの教員からは
「先生、朝読書中は静かに読書させてください。こちらの生徒も落ち着きがなくなりますから」
「給食中はナフキンをひくんですよ! そういう決まりだからちゃんと指導してください」
という注意も多くなり、他の教員が裏で沢井先生のことをあれやと噂をしているのです。

クラスでは、誰かの物がなくなることも増え、落書きやイタズラが増え・・・。
朝学級に上がるのが嫌で嫌でたまらなくなってきました。

保護者からの電話がかかってきました。
「授業がうるさくて集中できないと子どもが言っているんです。どうなってますか?」
「うちの子のリコーダーがなくなったんですけど。先生知っていましたか?」
沢井先生は胃がキリキリ痛みながら対応しました。


なんでこうなったのだろう


沢井先生は悩みます。
自分がちゃんと注意をしているのに、あいつらは聞こうともしない。
注意すれば逆ギレして、責任を取ろうとしない

おれはちゃんとやっているのに、どうしてこうなっているんだろうか・・・

・・・

沢井先生は決して悪い先生でもありませんし、力がない先生でもありません。
問題だったのは、生徒指導の方法がわからなかったことにあります

もしも、誰かが適切にその方法をアドバイスしていたら、結果は違った形になったと思います。

t-laboでは、そうした「知識や経験がないためにうまくいかない」をなくすために、現場で使える知識や考え方を教えていきます

現場に出て学ぶのでは遅いことがあるのです。
そうやって困った1人がぼくであります。


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